一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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優秀ポスターコンペティション

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優秀ポスター賞コンペティション
歯科衛生士部門

2023年6月16日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (1階 G3)

[優秀P衛生-1] 歯周病のメインテナンスおよび食事指導により口腔機能が向上した症例

○黒澤 奈保子1、岡田 真治2,3、赤塚 澄子1、西尾 健介2,3、伊藤 智加2,3、飯沼 利光2,3 (1. 日本大学歯学部付属歯科病院 歯科衛生室、2. 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座、3. 日本大学歯学部付属歯科病院 総義歯補綴科)

【緒言・目的】
 歯科衛生士としてオーラルフレイル予防に取組むためには,問診だけでは明確な指導が困難である。患者へ口腔機能検査結果を共有し,メインテナンスと食事指導を行った。その結果,口腔機能の向上を得たため報告する。
【症例および処置】
 60歳女性,右頰を咬みやすくなったことを主訴として来院。糖尿病Ⅱ型と躁うつ病の現症あり。糖尿病Ⅱ型に対しDPP-4阻害薬とaグルコシダーゼ阻害薬を服用しHbA1cは5.0%である。躁うつ病に対し口腔乾燥症を副作用とする選択的セトロニン再取り込み阻害薬(SSRI)と筋弛緩作用があるベンゾジアゼピン系(BZ)薬を長期服用していた。口腔内は残存歯が 24本(インプラント2本含む)。全顎的に顕著なプラーク付着が認められ,歯周組織検査結果からも清掃指導およびメインテナンスの必要性が考えられた。また咬頰の訴えから,不良補綴物による影響を懸念したが,問診により全身疾患に由来する口腔周囲筋の筋力低下が疑われたため,口腔機能検査を先行することとした結果,5項目に低下が認められ口腔機能低下症と診断した。患者に検査結果の詳細を説明することにより口腔内への関心が向上したため,メインテナンスと食事指導を行った。舌ブラシの使用は困難とされたことから,患者に配慮した清掃指導と月1度のクリーニングを徹底し,通常の食事では咀嚼回数増加による唾液流出量の増加を意識し,さらに偏咀嚼を改善する事を目標とし指導を行った。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 SSRIとBZ薬を長期服用しているが,現段階では口腔機能に異常な低下は認められなかった。口腔機能検査を行うことで,患者の生活環境や偏食,咬み癖を確認する事ができたため,オーラルフレイル予防の取組みがスムーズに実施できた。それにより指導実施後には,低下に該当した5項目の数値の改善がみられた。主訴であった右側咬頰及び頰粘膜圧痕は指導から半年後に改善されてきた。また,食事指導を行った結果,舌苔の減少が認められた他,咬み応えのある食事を意識するようになった。今後は,健康意欲の急な向上の反動に留意して,経過を追う必要性があると考えている。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)