一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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優秀ポスターコンペティション

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優秀ポスター賞コンペティション
歯科衛生士部門

2023年6月16日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (1階 G3)

[優秀P衛生-2] 回復期リハビリテーション病棟の高齢患者に対し病気関連不安認知尺度を応用し歯科衛生士が介入を行った症例

○佐藤 穂香1、中野 有生1、釘宮 嘉浩1、村上 正治1、中村 純也1 (1. 国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部)

【緒言・目的】
入院患者は疾患そのものに加え入院生活に伴い様々な不安やストレスを感じるため,抑うつ傾向になりやすく,精神的健康を阻害されやすい。精神的健康は生命予後や身体回復にも影響を与えると言われている。これらのことから,入院中の患者の不安やストレスを軽減し,精神的健康を維持する必要があると考えられる。精神的健康は病気関連不安と関連していることから今回,回復期リハビリテーション病棟に入院中の高齢脳梗塞患者に対し病気関連不安認知尺度を応用し歯科衛生士が介入をした症例を報告する。
【症例および経過】
83歳,男性。令和4年10月上旬に左内包アテローム血栓性脳梗塞を発症し当センターへ入院。第18病日目に回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。翌日に歯科衛生士による口腔アセスメントにて口腔清掃不良を認めたため,口腔健康管理目的で当科初診となった。右上下肢不全麻痺を患い,利き手の代償として左手で歯磨きを行っていた。Plaque Control Record(PCR)を測定したところ100%であった。主訴は満足な歯磨きが出来ないことであり,初診時よりセルフケアに対する心配や不満を幾度となく訴えていた。会話から不安が強いと予測できたため,病気関連不安認知尺度15項目を用いて患者の病気関連不安を評価した。結果は6点であり特に医療に対する不安が強かった。ラポール形成のため不安の傾聴と詳細な説明を重視した。さらに歯科衛生士による週1回の口腔健康管理に加え,利き手ではない左手でも清掃可能な電動歯ブラシを指導した。指導の結果,PCRは26%まで低下した。患者は入院中の3カ月間で病気関連不安が4点低下し,目標としていた在宅へ復帰した。 本報告の発表について患者本人と家族から文書による同意を得ている。
【考察】
満足できるセルフケアが可能となったことで,口腔清掃に対する不安の訴えが減少した。食形態があがり食事摂取量が増加した。笑顔が増え,積極的にリハビリテーションや他者と交流している様子が見受けられた。入院早期に病気関連不安をアセスメントし,患者の抱える不安に配慮した介入ができたことが,患者のADL,QOLの上昇に貢献し,自宅退院へとつながったと考えられる。高齢入院患者はストレスが多く精神的健康が阻害されやすいことから,不安に考慮した対応が必要であると考えられる。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)