一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演5
全身管理・全身疾患/症例・施設

2023年6月18日(日) 10:20 〜 11:20 第2会場 (3階 G303)

座長:
片倉 朗(東京歯科大学口腔病態外科学講座)
岩佐 康行(社会医療法人 原土井病院 歯科)

[O5-2] がん終末期患者に対する口腔ケアが口腔乾燥の緩和につながる

○田中 紘子1、岡本 美英子2、坂井 鮎1、蟹江 仁美1、黒田 茉奈2、龍田 泉希2、金森 大輔3、吉田 光由2 (1. 藤田医科大学病院 歯科・口腔外科、2. 藤田医科大学 医学部 歯科・口腔外科学講座、3. 藤田医科大学 医学部 七栗記念病院 歯科)

【目的】
がん終末期患者の看取りケアに口腔ケアは大切である。これは口腔乾燥が患者に不快感を与え,経口摂取や発話を妨げると考えられているからである。私たちが経験してきた緩和病棟での臨床において,これら終末期の患者への口腔ケア介入により食事摂取や会話の機能が向上する場面に遭遇することがよくあり,口腔を湿潤させることが出来たことによる効果ではないかと感じている。そこで今回,がん終末期患者を対象に死亡直前に介入した際の口腔ケア前後の口腔湿潤度の変化を把握することで,看取りケアでの口腔ケアが口腔乾燥の緩和につながるかを検討することとした。
【方法】  
2022年6月から12月までに,当院緩和病棟において死亡退院した患者39名を対象とした。死亡退院前の最終介入日に,口腔水分計ムーカスを用いて口腔ケア前後での口腔内の湿潤度を測定し,また、開口量とフェイススケール(FS)についてもその変化を検討した。統計解析は対応のあるノンパラメトリック検定であるウィルコクソンの符号順位検定を用い,有意水準は95%とした。
【結果と考察】  
患者は男性25名,女性14名であり,平均年齢74.4±11.4歳であった。がんの原発巣は肺が14名,消化器が13名,血液・骨髄が4名,その他が8名であった。最終介入から死亡退院までの日数は,平均3.4±2.1日であった。この時点で経口摂取が維持できていた者は13名であり,半数以上の26名の者は欠食となっていた。口腔ケア前のムーカス平均値は19.9±7.8,口腔ケア後のムーカス平均値は27.2±3.2となり,口腔ケア前後でムーカスの値は有意に向上し,口腔を湿潤させることができた。口腔ケア前の開口量平均値は31.1±20.4mm,口腔ケア後の開口量平均値は35.9±20.3mmであり,ケア後は有意に向上した。10段階で評価したフェイススケールはケアの前後で有意な差はみられなかった。苦痛を訴えるような表情はなく,落ち着いた表情のままであったことから看取りケアとして口腔ケアは非常に有意義であると考えられた。以上より,がん終末期患者への口腔ケアは口腔乾燥を緩和させ,看取り期の患者のQOLを向上させる可能性があることが示された。(COI開示:なし)(藤田医科大学倫理審査委員会承認番号:番号:HM21-415)