一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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ポスター発表3
症例・施設

2023年6月17日(土) 10:00 〜 10:30 ポスター会場 (1階 G3)

座長:伊藤 加代子(新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科)

[P18] 在宅における重度嚥下障害患者に対し医科歯科連携を図り外科的治療を実施した症例報告

○金子 信子1、野原 幹司2、阪井 丘芳2 (1. なにわ歯科衛生専門学校、2. 大阪大学大学院歯学研究科 高次脳口腔機能学講座 顎口腔機能治療学教室 )

【緒言】
嚥下障害は加齢や様々な疾患が原因となり生じるが,高齢者の場合は入院が契機ということもある.入院中に生じた場合は嚥下機能評価,嚥下訓練や栄養改善といった対応がなされる。しかしながら嚥下機能が改善しなければ,原因は精査されないまま経管栄養で退院する症例もある。 今回は入院中に嚥下障害を生じたものの原因が精査されなく,退院後に医科歯科の病診連携を図り外科的治療にて嚥下障害が回復した症例を報告する。
【症例および経過】
患者は70歳代の男性で,COVID-19感染で入院中に繰り返す誤嚥性肺炎になり,胃瘻にて退院した。在宅医からの診療情報提供書は「サルコペニアの嚥下障害」と明記してあったことから,経口摂取は可能と思われた。しかしながら初診時の患者は常に唾液と痰を喀出し,嚥下内視鏡検査では泡沫状唾液が咽頭に多量貯留し,一部を誤嚥している重度嚥下障害であった。方針は嚥下おでこ体操,呼吸訓練,直接訓練などの嚥下訓練で嚥下機能の改善を試みて,状況により外科的治療を検討とした。嚥下訓練は都度細かく指導して患者・家族を支え,初診5ヶ月後に少量の経口摂取は可能になったが,患者・家族はさらなる経口摂取を希望し,経過と嚥下内視鏡検査などから外科的治療を選択した。このときの患者・家族の懸念は病院が遠方で退院後の通院が困難とのことから,当院が文章と電話にて病診連携を図り退院後のフォローをすることにした。病院耳鼻咽喉科医師(以下,病院医師)が嚥下機能改善術として喉頭挙上術・輪状咽頭筋切除術,気管切開を決定し,初診9ヶ月後に実施された。入院中の経過は病院医師より当院に随時報告がされ,術後1ヶ月で退院した。退院後,経口摂取はほぼ問題ないものの喉頭挙上術に使用したテープの感染を認めたため,創部感染もフォローとなった。術後2ヶ月で普通食全量経口摂取され嚥下障害は回復し,術後6ヶ月で胃瘻は閉鎖となった。創部感染は治難性であったため,術後8ヶ月で病院医師によってテープは除去され,創部は治癒,嚥下機能は維持され経過は良好であった。なお,本報告の発表について患者本人から同意を得た。
【考察】
在宅患者の重度嚥下障害が回復したのは,歯科において嚥下機能を適切に評価し,医科歯科の病診連携を図りながら外科的治療にて嚥下機能の改善を図ったためと思われた。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)