一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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ポスター発表4
症例・施設

2023年6月17日(土) 10:30 〜 11:00 ポスター会場 (1階 G3)

座長:堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[P21] 通院中断する口腔機能低下した高齢者に継続通院による口腔健康管理をおこなった症例

○椛木 奈賀子1、青木 綾1、日吉 美保1、渡辺 八重1、渡辺 真人1 (1. 医療法人社団健由会さくら歯科医院)

【目的】
社会的繋がりは疾病の発見やその後の機能回復の一助になると考える。今回,コロナ禍で社会的繋がりが断たれ口腔機能低下に陥った患者に対し,患者家族をキーパーソンとして連携を図り口腔健康管理をおこない,機能改善がみられた症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
84歳女性。高血圧の既往がありメマンチン塩酸塩の服用歴はあるが,継続的な医科への通院はなく現在の服薬はなし。2021年7月「上下義歯が痛くて使えない」との主訴に単独で来院された。 初診時口腔内:残存歯14歯。重度慢性辺縁性歯周炎をみとめ,口唇・舌・頬粘膜および辺縁歯肉から自然出血がみられた。多量のプラークが付着しており,痛みで半年程刷掃できず義歯も使用出来なかった。そのため食事は咬まずに済むものであった。義歯新製に向け口腔環境を整えることに同意を得て診療開始したが予約忘れが続き来院が途絶えた。 2022年4月,患者の異変に気付いた娘と共に再来院した。再来院前に病院口腔外科にかかり口腔内の糜爛に対し天疱瘡疑いにて血液検査を行い問題ないとの診断をうけ含嗽剤の処方をされたが,口腔内は出血と排膿を認め,疼痛で口が動かせない状態であった。 継続通院による早期の疼痛緩和と機能回復目的に診療を開始。患者への精神面や認知機能のフォローを家族への定期的な連絡で行うことを提案し同意を得た。 診療に際しては痛みと出血に配慮し,サブソニック振動ブラシ専用ハンドピース,軟毛ブラシ,ガーゼ,スポンジブラシ,ジェル剤を用いて口腔衛生管理を行うとともに,セルフケアに関しては軟毛ブラシ,ガーゼ,洗口剤を用いた口腔衛生指導をおこなった。診療毎に予約および栄養状態の確認,処置に対する前向きな声掛けや意向の確認をおこない家族に対しても文書にて診療内容や診療時の患者の様子に関し情報伝達を行った。 継続して通院することで口腔衛生状態も改善に向かい,抜歯および義歯新製により機能回復し,摂食の改善による体重増加と会話や表情の豊かさを取り戻すことができた。 本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
今回口腔内の愁訴の改善を行うにあたり患者の精神面や認知機能に配慮し,寄り添いながらモチベーション向上に努め,患者家族に協力を得てキーパーソンとして連携を行い継続通院に繋げられたことが口腔機能回復に寄与できた要因と考えられた。 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)