一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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一般演題(ポスター発表)

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ポスター発表5
一般

2023年6月17日(土) 15:15 〜 15:45 ポスター会場 (1階 G3)

座長:永尾 寛(徳島大学大学院 口腔顎顔面補綴学分野)

[P25] 高齢の脳性麻痺患者に対し,側頭筋筋活動測定装置を用いて,睡眠時ブラキシズムの定量解析を行った1例

○尾田 友紀1、朝比奈 滉直1、濱 陽子2、岡田 芳幸1 (1. 広島大学病院障害者歯科、2. 広島口腔保健センター)

【緒言・目的】
脳性麻痺患者では,不随意運動によるブラキシズムのため,咬耗や歯の動揺,顎関節症などを生じることがある。しかし,脳性麻痺患者が睡眠時にどの程度ブラキシズムを起こしているのかは不明である。そこで,歯の動揺と義歯不調をきたした高齢のアテトーゼ型脳性麻痺患者に対し,側頭筋筋活動測定装置(GrindCare®)を用いて,睡眠時ブラキシズム発生頻度の定量化を行ったので報告する。なお,本発表に際し患者本人から文書による同意を得た。
【症例および経過】
患者:74歳男性。障害:アテトーゼ型脳性麻痺。既往歴:誤嚥性肺炎。現病歴:10年前より部分床義歯を使用していたが,不随意運動に起因する残存歯の動揺や義歯不調による床下粘膜の疼痛をしばしば生じており,その都度咬合調整や義歯調整を行ってきた。ブラキシズムの自覚があり,特に起床直後に側頭部に疼痛がみられた。内服薬:ダントロレンナトリウム(痙性麻痺緩解剤),バクロフェン(抗痙縮剤),ジアゼパム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)。現症:(全身)車椅子,ADL全介助 ,発語は不明瞭だがヘルパーを介しコミュニケーション可能。(口腔)残存歯15本。顎関節に特記所見なし。経過:残存歯の動揺や減少に対し,患者はかねてより不安を感じていた。そこで,患者の側頭筋こめかみ部へGrindCare®を貼付し,睡眠中の側頭筋筋活動の記録を4週間行った。装置は違和感なく継続装着でき,睡眠に支障はなかった。感知した1時間あたりの平均睡眠時ブラキシズムイベント数は20±11回であった。
【考察】
本装置を用いた健常対象者における1時間あたりの平均睡眠時ブラキシズムイベント数は,6.2回との報告がある。本患者はその約3倍のイベント数を記録しており,睡眠時にブラキシズムが頻繁に生じていた。GrindCare®は,ワイヤレスの小型筋活動電位計測装置であり,少ないストレスで睡眠の質を損なうことなく睡眠時の咀嚼筋活動のレベルを示すことが出来る。さらに,筋活動の感知により,微弱電流による刺激を咀嚼筋に与えるモードに設定可能である。今後は,対象者数を増やし,脳性麻痺患者の睡眠時ブラキシズムの特徴を解析し,微弱電流によるブラキシズム軽減法についての研究が必要と思われた。(COI開示:なし)(広島大学倫理審査委員会承認番号E-1651)