一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表9] 歯科衛生士

ポスター発表9
歯科衛生士

2023年6月18日(日) 10:00 〜 10:25 ポスター会場 (1階 G3)

座長:金森 大輔(藤田医科大学 医学部 七栗歯科)

[P48] パーキンソンニズムを有する患者へ歯科訪問診療で口腔機能管理を継続的に行なった症例

稲葉 華奈子1、○谷口 礼奈1、中西 真由美1 (1. 医療法人社団あさがお会 あさがお歯科)

【緒言・目的】
 パーキンソンニズムや認知症により口腔機能,嚥下能力の低下を認めることがあり,投薬の調整や口腔ケアにより嚥下機能の改善,誤嚥性肺炎の予防に効果があることは知られている。我々はパーキンソンニズムのある患者に対して歯科訪問診療で口腔ケア,義歯作成,嚥下機能の評価と訓練,家族指導等を継続的に実施し,摂食嚥下機能の改善を認めた一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 83歳,女性。パーキンソンニズム,慢性腎不全,高血圧症,腰椎圧迫骨折,うつ病の既往あり。手指のふるえがあり食事,口腔清掃は全介助。3週間ほど経口摂取できず点滴を行なっていた。2021/7/31初診。口腔内清掃状態,嚥下機能評価実施。口腔乾燥と舌苔の付着ありプラークコントロール不良。舌の可動域制限があり,食事では口腔内残留,誤嚥を認めた。介護者に口腔ケア・口腔嚥下体操の方法と適切な食形態・食事姿勢の指導を行なった。嚥下障害の原因として抗うつ剤(スルピリド)の影響も考えられたため,主治医に相談のもと休薬となる。2021/8/12再診。口腔清掃状態不良であったため,歯科医師の指導のもと介護者に歯科衛生士から口腔嚥下体操,口腔ケア指導を行なった。隔週の口腔ケアと口腔嚥下体操を継続しプラークコントロールは改善傾向。2021/8/28嚥下機能再評価実施。抗うつ剤(スルピリド)休薬後送り込みは改善傾向にあるが固形物の口腔内残留が認められたため口腔嚥下体操を継続とした。2021/11/6 嚥下機能定期評価実施。前回より送り込みは改善したが,上顎義歯がないため食塊形成不全,咀嚼機能が低下していると考えられたため上顎義歯作製を開始。2022/2/26 義歯装着により咀嚼嚥下共に良好に経過。軟飯や常食の摂取が可能となった。現在も患者の食べる楽しみを保つために定期的に口腔機能管理を行なっている。
なお,本報告の発表について患者本人,家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 口腔ケア,口腔嚥下体操の継続および主治医や家族との連携により誤嚥性肺炎の罹患を予防することができたと考えられる。義歯の作製により咀嚼,嚥下機能の改善も認められ,安全な食環境を整備できた。今後も口腔内へのモチベーションを維持していけるよう口腔機能管理を継続して行く必要があると考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)