一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表9] 歯科衛生士

ポスター発表9
歯科衛生士

2023年6月18日(日) 10:00 〜 10:25 ポスター会場 (1階 G3)

座長:金森 大輔(藤田医科大学 医学部 七栗歯科)

[P49] 口腔がん患者に対する術前後および退院後の継続した介入の重要性 ~上顎歯肉がん患者の1例~

○木村 菜摘1、松原 恵子1、大塚 あつ子2、中尾  幸恵3、浅野 一信4、多田  瑛5、水谷 早貴6、谷口 裕重2 (1. 朝日大学病院 歯科衛生部、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 近石病院 歯科・口腔外科、4. 朝日大学病院 栄養管理室、5. 朝日大学歯学部 口腔外科学分野、6. 朝日大学歯学部 障害者歯科学分野)

【緒言・目的】
口腔がん患者は,術前後の合併症予防に加え,術後の摂食嚥下障害による低栄養や二次性サルコペニアを予防する必要がある(末廣ら,日耳,2022)。当院歯科・口腔外科では他職種が連携し,口腔がんの術前後および退院後に至るまで一貫した口腔・咽頭および栄養の管理に努めている。今回,広範囲な摘出術と放射線治療を施行された上顎歯肉がん患者に対する,術前後および退院後の経過を報告する。
【症例および経過】
78歳,男性。糖尿病の既往あり。X年1月左側上顎歯肉癌(T3N0M0 stageⅢ)に対し,上顎全摘出 左側頸部郭清(Ⅰ~Ⅲ)腹直筋皮弁による再建,気管切開,術後放射線療法(30回/66Gy)が施行された。歯科衛生士は,術前日より口腔衛生管理とともに,咳嗽訓練を中心とした指導を行い,術後合併症予防に努めた。術後1日目より術前と同様の介入をし,術後8日目・18日目より間接訓練・直接訓練を開始,術後28日目には顎義歯を装着し食事摂取開始した。放射線療法に伴う放射線性口腔粘膜炎の重症化により(CTCAEv.3.0 Grade4)一時的に経鼻経管栄養になるも,術後113日目にはFOIS(Functional Oral Intake Scale:以下FOIS)が5となり,術後121日目には術前後の合併症なく自宅退院となった。 X+2年後,「喉に入っていかない。」との訴えがあり,口腔機能ならびに嚥下精密検査を実施したところ,咽頭期障害を認めないものの,咀嚼能力低下を認めた。この時点でFOIS4に低下していた。口腔機能訓練とともに,顎義歯新製,PAP形態を付与し,管理栄養士による栄養指導の下,摂食機能訓練を行ったところ,8か月後には口腔機能改善を認め,FOIS6となった。 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
入院中から口腔衛生管理の徹底や訓練の継続ならびに他職種が連携し,自宅での生活を見据えながら介入を行ったことで,治療完遂,延いてはFOISの維持に寄与できたと考える。本症例では,退院後のがん再発転移の評価に加え,他職種が連携し,嚥下機能のみならず口腔機能にも配慮した介入の重要性が示唆された。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)