[P54] 要支援・要介護高齢者における認知症の程度を踏まえた日常生活自立度と歯科治療ニーズおよび口腔衛生管理ニーズの関係
【目的】
要支援・要介護高齢者において,認知症高齢者の日常生活自立度(以下,認知症自立度)が歯科治療ニーズおよび口腔衛生管理ニーズと関連しているかを明らかにすること目的とした。
【方法】
認知症自立度ランクⅠ以上の要支援・要介護高齢者315名(男性72人,女性243人,平均年齢85.3歳)を対象とした。基礎情報,介護認定,認知症自立度を把握した上で,十分な経験を有する歯科医師・歯科衛生士が口腔内状況,歯科治療ニーズ(義歯,抜歯,う蝕,歯周疾患の治療の必要性の有無)および口腔衛生管理ニーズ(歯科専門職の介入の必要性の有無)等を調査した。歯科治療ニーズおよび口腔衛生管理ニーズを従属変数とし,年齢,性別,認知症自立度(Ⅰ[基準群]/Ⅱ/Ⅲ以上の3群),介護認定を独立変数とする二項ロジスティック解析を個別に実施し、ニーズの有無に関連する因子を抽出した。
【結果と考察】
研究対象集団における各ニーズの割合は義歯が48.1%,抜歯が44.4%,う蝕が41.3%,歯周疾患治療が75.4%,口腔衛生管理(介助者に対する指導の必要性)が62.5%だった。ロジスティック回帰分析の結果,各ニーズ別に有意に関連していた因子(オッズ比, 95%信頼区間)は,抜歯に対して認知症自立度Ⅲ以上(3.39,1.13-10.21),う蝕に対して認知症自立度Ⅲ以上(3.27,1.01-10.64),歯周疾患に対して認知症自立度Ⅱ(9.21,2.18-38.84)、認知症自立度Ⅲ以上(7.74,2,17-27.62),口腔衛生管理に対して男性(0.42,0.22-0.80),認知症自立度Ⅱ(2.53,1.28-5.00),認知症自立度Ⅲ以上(5.71,2.89-11.30)であった。本研究結果から,歯科治療や口腔衛生管理が必要となる要因としては,年齢や介護認定よりも認知症の程度を踏まえた日常生活自立度が強く影響していることが示された。外来診療が可能な認知症自立度Ⅱの段階から認知症の予後を見据えた治療および口腔管理を開始しておく必要性があることが示唆された。 (COI開示:なし) (東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会(2010年第44号))
要支援・要介護高齢者において,認知症高齢者の日常生活自立度(以下,認知症自立度)が歯科治療ニーズおよび口腔衛生管理ニーズと関連しているかを明らかにすること目的とした。
【方法】
認知症自立度ランクⅠ以上の要支援・要介護高齢者315名(男性72人,女性243人,平均年齢85.3歳)を対象とした。基礎情報,介護認定,認知症自立度を把握した上で,十分な経験を有する歯科医師・歯科衛生士が口腔内状況,歯科治療ニーズ(義歯,抜歯,う蝕,歯周疾患の治療の必要性の有無)および口腔衛生管理ニーズ(歯科専門職の介入の必要性の有無)等を調査した。歯科治療ニーズおよび口腔衛生管理ニーズを従属変数とし,年齢,性別,認知症自立度(Ⅰ[基準群]/Ⅱ/Ⅲ以上の3群),介護認定を独立変数とする二項ロジスティック解析を個別に実施し、ニーズの有無に関連する因子を抽出した。
【結果と考察】
研究対象集団における各ニーズの割合は義歯が48.1%,抜歯が44.4%,う蝕が41.3%,歯周疾患治療が75.4%,口腔衛生管理(介助者に対する指導の必要性)が62.5%だった。ロジスティック回帰分析の結果,各ニーズ別に有意に関連していた因子(オッズ比, 95%信頼区間)は,抜歯に対して認知症自立度Ⅲ以上(3.39,1.13-10.21),う蝕に対して認知症自立度Ⅲ以上(3.27,1.01-10.64),歯周疾患に対して認知症自立度Ⅱ(9.21,2.18-38.84)、認知症自立度Ⅲ以上(7.74,2,17-27.62),口腔衛生管理に対して男性(0.42,0.22-0.80),認知症自立度Ⅱ(2.53,1.28-5.00),認知症自立度Ⅲ以上(5.71,2.89-11.30)であった。本研究結果から,歯科治療や口腔衛生管理が必要となる要因としては,年齢や介護認定よりも認知症の程度を踏まえた日常生活自立度が強く影響していることが示された。外来診療が可能な認知症自立度Ⅱの段階から認知症の予後を見据えた治療および口腔管理を開始しておく必要性があることが示唆された。 (COI開示:なし) (東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会(2010年第44号))