一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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課題口演2
口腔機能

2023年6月17日(土) 10:10 〜 11:30 第3会場 (3階 G304)

[課題2-1] 口腔機能と日常生活行動 ―基本チェックリストの分析より―

○内堀 典保1、外山 敦史1、宮本 佳宏1、日置 章博1、丹羽 浩1、山中 佑介1、森田 知臣1、小川 雄右1、上野 智史1、籾山 正敬1、南 全1、富田 喜美雄1、朝比奈 義明1、武藤 直広1、鈴木 雄一郎1、冨田 健嗣1、森 幹太1、山中 一男1、椙村 豊彦1、渡邊 俊之1 (1. 一般社団法人愛知県歯科医師会)

【目的】
 口腔機能の低下は,食欲も低下し栄養の不足により筋量や筋肉の減少また免疫,代謝機能の低下などから全身の機能低下につながるといわれている。今回,当会の行った調査から口腔機能と日常行動の関連を知ることを目的に解析を行った。
【方法】
 2019年に愛知県知多郡東浦町で要介護認定を受けていない65~82歳の高齢者を対象に,口腔機能検査,口腔内診査,基本チェックリスト(厚生労働省作成)を含む問診票調査等を行った。参加者のうち,基本チェックリストおよび口腔内診査,口腔機能検査の各項目にデータ欠損のなかった男性296名(平均年齢73.6歳)および女性350名(平均年齢72.7歳)を対象とした。男女別に口腔機能低下症および各口腔機能の低下者と健全者に分け,基本チェックリストの各質問項目の回答率を比較し,χ2検定を行った。ただし,口腔機能検査において結果が著しく偏っている項目は分析から除外した。
【結果と考察】
 口腔機能の結果において,口腔衛生状態は男女とも9割以上の者が不良であったが,咀嚼機能,嚥下機能低下者の割合は少なかったため,これらの口腔機能での結果の比較は除外した。舌口唇運動機能低下者,口腔機能低下症該当者の割合は有意に男性が高く,また基本チェックリストの結果から多くの項目で男女差がみられた。口腔機能低下の有無からは,男性では口腔機能関連の質問項目と精神関連の質問項目,女性では筋力に関する質問項目と有意な関連がみられた。更に口腔機能別からは,口腔乾燥を示す男性では堅いものが食べにくくなったが,転倒の不安は少なく,また女性では外出頻度は減っていない結果であった。口腔乾燥は多くの薬剤の影響も考えられ,通院等で外出頻度の低下を防いでいる可能性がある。咬合力低下の男性では日常生活の活動性が低下し,女性では筋力に関係する行動が低下していた。舌口唇運動機能低下は,男性では外出頻度や認知機能と,筋力関連項目および口渇感と関連がみられ,特に舌圧は,男性では認知機能と,女性では筋力関連項目と有意な関連がみられた。
 今回の調査解析から,男性における口腔機能低下は社会的フレイルと,女性では身体的フレイルと関連することが示唆され,口腔機能の向上ならびに口腔機能低下から引き起こされるフレイルの予防に有益な知見を得ることができた。
(COI開示:なし)
(愛知県歯科医師会倫理委員会承認番号 愛歯発第302号)