一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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課題口演2
口腔機能

2023年6月17日(土) 10:10 〜 11:30 第3会場 (3階 G304)

[課題2-3] 閉塞性睡眠時無呼吸の高齢患者における上気道形態の特徴

○和田 圭史1、王 麗欽1、奥野 健太郎1,2、真砂 彩子1、髙橋 一也1 (1. 大阪歯科大学 高齢者歯科学講座、2. 大阪歯科大学附属病院 睡眠歯科センター)

【目的】
睡眠の質を著しく低下させる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,高齢者でも一般的な病態である。加齢に伴って有病率と重症度は高くなると報告されており,高齢者に特異的なOSA原因があると考えられる。中年者OSAの原因として知られている肥満や小下顎など,上気道を狭める解剖学的な因子に加えて,高齢者OSAでは加齢に伴う上気道筋群の神経調節機構の虚弱化により,睡眠中の上気道の維持機能が低下していると考えられている。我々は,高齢者OSAの原因として,解剖的因子(上気道の狭小化)と機能的因子(上気道の維持機能低下)が影響するのでは?と仮説を持った。本研究では,まずは解剖的因子に着目し,中年OSA患者と高齢OSA患者の比較を行った。
【方法】
2017年5月から2022年9月の間に当院の睡眠歯科センターを受診した初診患者772名を対象に後方視的に調査した。PSG検査によるOSA診断,40歳以上の男性,セファログラム検査の実施を選択基準とし,185名を解析対象とした。対象者を年齢から中年者(40 ≤ age<60),高齢者(65 ≤ age)に分けた。OSAの重症度(軽度、中程度、重度)別に,肥満度の指標としてBMI,上気道形態の評価項目としてセファログラム検査にて得られる,気道前後径(SAS),軟口蓋長(PNS-P),小下顎の指標としてSNB,舌骨位置(MP-H)の各項目について,中年者と高齢者の2群間の比較をt検定にて分析した。
【結果と考察】
いずれのOSA重症度でも,中年者に比べて高齢者でSASが有意に大きかった(12.1 vs 16.2mm;軽度, 12.3 vs 15.9mm;中程度,11.6 vs 15.2mm;重度,p<0.01)。OSA重度群では,中年者に比べて高齢者でBMIが有意に低かった(26.4 vs 24.6kg/m2,p<0.05)。PNS-P,SNB,MP-Hにおいては有意な差を認めなかった。 本研究により,同じOSA重症度では中年者に比べて高齢者で気道径が大きく,OSA重症の群では高齢者でBMIが低かった。加齢変化に伴い高齢者では上気道が狭小化しOSAの発症・悪化の原因になるのでは?という当初の仮説とは逆の結果であった。高齢OSA患者では,解剖的因子ではなく機能的因子がOSA原因として大きく関与することが示唆される。今後は,上気道維持に関わる機能的因子について検討する予定である。
(COI開示:なし)
(大阪歯科大学医の倫理委員会 承認番号 111047)