一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム11
【大会長企画】始まりは地域から~地域歯科医院の挑戦~

2023年6月18日(日) 12:40 〜 14:10 第3会場 (3階 G304)

座長:五島 朋幸(ふれあい歯科ごとう)

共催:株式会社ロッテ

[SY11-2] 歯科に地域が救えるか ~医療インフラとしての歯科医院~

○渡部 守1 (1. まもる歯科)

【略歴】
2002年 新潟大学歯学部卒業
2006年 新潟大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了(摂食・嚥下リハビリテーション学分野)
2008年 渡部歯科医院 院長
2016年 まもる歯科 院長 博士(歯学)

新潟県歯科医師会地域保健部員
佐渡歯科医師会在宅歯科医療連携室長
【抄録(Abstract)】
佐渡は、離島でありながら面積が広く、また海と山とが複雑に入り組んで平地を分断し、ぽつんぽつんと小さな集落が点在している。
過疎地域では、地域住民を支える医療・介護その他の資源が圧倒的に不足し、そしてそれは進行する一方である。医師、看護師、介護士、リハビリ職、栄養士、いずれも足りない。病院が次々に閉鎖され、最寄りの医療機関まで片道1時間以上という集落も少なくない。
これら医療インフラの不足は、これまで地域コミュニティによって補われてきた。しかし、人口減少と高齢化によって共助が力を失い始めている。財政基盤の弱い過疎地では、行政などの公助に限界があるのは論ずるまでもない。
このような中で、演者の地域では、歯科医療はまだそれなりに踏みとどまっている。しかし歯科医師も高齢化が進み、やがて、医師や看護師と同じような状況になることは確定的である。
演者が島に帰って仕事をし始めて約20年になる。この間も地域の過疎化と高齢化は歯止めなく進み、地域は変わり続けている。かつて抱いていた「地域の人々を支えたい」という単純で素朴な夢は少しずつ変質し、たくさんの挫折と失敗を経て、いま歯科医療が地域の重要な医療インフラになることを目指す「インフラ歯科」という考えを持つに至った。
電気や水道のように、赤ちゃんから高齢者まで、マタニティから看取りまで、地域の口腔の健康や「食」をくまなく支えることができれば、衰退していく地域を少しは救うことができるだろうか?
私がインフラ歯科の概念を考えるようになったのは、大学時代から若手時代に出合い、学びを乞うた先輩歯科医師たち、そして地域の人々からの大きな影響がある。
過疎地域の歯科医療のこれまでと、これからとについて、皆さんと議論したい。