シンポジウム4
高齢者歯科の研究におけるリアルワールドデータの活用

[SY4-1] データサイエンスとオープンサイエンスによる高齢者歯科医療への貢献

○野﨑 一徳¹ (1. 大阪大学歯学部附属病院　医療情報室)

【略歴】
2001年 3月 北海道大学歯学部 卒業
2001年 4月 大阪大学大学院歯学研究科博士課程 入学
2004年 3月 大阪大学大学院歯学研究科博士課程 修了（博士（歯学））
2004年 4月 大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門 教務職員
2006年 4月 大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程 入学
2009年 4月 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 特任講師（常勤）
2009年 9月 大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程 修了（博士（情報科学））
2011年 7月 ジョセフ・フーリエ大学Gipsa-Lab 客員教授
2011年 8月 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻生体工学講座 特任講師（常勤）
2013年 4月 大阪大学歯学部附属病院医療情報室 助教
2019年 7月 大阪大学歯学部附属病院医療情報室 准教授
2019年 8月 大阪大学歯学部附属病院医療情報室 室長

【抄録（Abstract）】
歯科医療において、デジタル技術が活用されるようになり、日常的にデータの蓄積が行われている。この蓄積されたデータを活用し、より高度な研究の推進を可能にするのがデータサイエンスである。データサイエンスは、高齢者の医療における効率的な診療計画の策定や予防医療の推進に貢献できる。また、医療費の削減にも貢献することができるであろう。 データサイエンスを推進する上で欠くことのできないのが多種多様で大量のデータリソースである。臨床研究分野における情報共有を促進し、研究の信頼性と再現性を高め、患者情報のデータサイズやデータ発生源のばらつきから、バイアスや不正を防止することも重要となる。特に、患者中心の医療においては、患者情報を共有し、それに基づいた最適な医療を提供することが重要だ。そこで、オープンサイエンスによって、患者情報を共有することで、歯科医療分野における臨床研究の透明性や再現性の確保し、歯科医療の信頼性と正確性を高めることを目指す。また、オープンサイエンスは、社会の知識プラットフォームとして機能し、情報の共有によってより高度な歯科医療研究が可能となることが期待される。 一方で、患者情報を共有するには、プライバシーやデータ主権の問題が伴う。これらの問題を解決するためには、適切なデータセキュリティの確保が必要だ。また、患者情報を共有する場合には、情報処理の公平性や真正性の確保も重要だ。つまり、患者情報のデータ共有を実現するためには、技術的な側面とともに倫理的な観点からの取り組みが必要とされている。 オープンサイエンスによって患者情報のデータ共有が実現され、患者中心の歯科医療が推進されることで、より高度で信頼性のある歯科医療が提供され、医療分野全体の発展につながることが期待される。さらに、スーパーシティ構想における都市OS等の普及が進む近未来では、自治体等から収集された患者情報をデータマネージメントによって信頼性を確保した上で、データサイエンスによる分析を行うことが必要だ。さらにデータの標準化やサイバーセキュリティの確保も必須となる。患者を中心とした研究者や医療従事者の間での情報共有を促進することで、データサイエンスを歯科医療で活かす機会を増やしていきたい。