一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム8
回復期における歯科の役割と医療連携

2023年6月18日(日) 08:20 〜 10:10 第3会場 (3階 G304)

座長:大野 友久(浜松市リハビリテーション病院)

企画:病院歯科委員会

[SY8-1] 口のリハビリテーションの薦め:医科歯科連携の重要性

○栗原 正紀1,2 (1. 長崎リハビリテーション病院、2. 日本リハビリテーション病院・施設協会)

【略歴】
1978年長崎大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院脳神経外科学教室に入局。1990年長崎大学脳神経外科講師、その後、長崎市内の老舗の救急病院である十善会病院の脳神経外科部長として赴任。1999年同病院副院長。この間、長崎実地救急医療連絡会をたちあげ救急医療システムの構築を、また長崎斜面研究会の初代代表として地域リハビリテーション、まちづくりなどに参画し、2001年近森リハビリテーション病院院長、2006年同院長職を辞し、社団法人是真会理事長就任。2008年2月長崎リハビリテーション病院(143床、3つの回復期リハビリテーション病棟を有す)を開設(同院長)。2020年4月より院長を辞し、一般社団法人是真会理事長。役職:日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)代表理事、全国リハビリテーション医療関連団体協議会代表、日本リハビリテーション病院・施設協会名誉会長、日本病院会理事・長崎支部長、他。 現在に至る。
【抄録(Abstract)】
団塊の世代が全て75歳以上となる2025年を目指して、「地域医療構想の実現」「地域包括ケアシステムの構築」が重要な課題となっている。中でも地域医療構想では急性期(高度・一般)・回復期・慢性期という医療機能の分化・連携に基づく地域完結型医療提供体制の整備が求められている。重要なことは単に受療推計値に基づく病床数の調整に留まらず、地域医療が多職種協働を基盤とした機能分化・連携によって地域生活を支えるという仕組みづくりであり、“医療の中に生活の視点を如何に取り込むことができるか”が問われている。急性期(高度・一般)は「救命救急・疾病の治療・安定化」に加えて『生活の準備』、回復期は「全身状態の安定化と障害の改善」且つ『生活の再建』、慢性期には「慢性疾患の継続治療」そして『獲得された生活機能の維持・向上」を図ることで急性期治療を地域生活に着実に繋ぐ(退院支援の重要な視点)という機能分化・連携が大切となる。このためには適時・適切且つ継続的に提供される急性期リハ・回復期リハ・生活期リハというリハビリテーション医療の普遍化が必須となる。 “口のリハビリテーション”(以下、口のリハ)とは「どのような障害があっても、最後まで人としての尊厳を守り、諦めないで口から食べることを大切にする」全ての活動をいう。口腔の持つ(1)呼吸、(2)構音そして(3)咀嚼・摂食嚥下の3大機能を重視し、基本方針として①口腔ケアの徹底(医科歯科連携)、②栄養管理(栄養サポート)、③廃用症候群の予防(リハビリテーションの展開)、④徹底したチームアプローチ(多職種協働)、⑤救急から在宅まで継続した支援(機能分化・連携)等の展開を掲げている。 口のリハでは、急性期においては「口から食べる準備:口腔ケアの徹底」、回復期においては「口腔機能(咀嚼・摂食嚥下機能含む)の再建」そして生活期では「口から食べることを大切にする」関わりを重視、それぞれの病期において歯科医師・歯科衛生士が多職種協働の一員として関わることが重要であり、強固な連携の環境づくりが必要と感じている(因みに、昨今は「リハビリと口腔ケア・栄養」は医療・介護領域に関わらず重要であることが議論されている)。殊に回復期においては口腔・咽頭ケアによる口腔衛生管理そして義歯の調整などは、摂食嚥下機能の改善・向上のための素地づくりとしても重要であり、歯科の関わりは不可欠である。更に退院後の生活機能の維持・向上を目指した医科歯科連携や歯科歯科連携による継続的支援が望まれる。 ポスト2025年には要介護高齢者の医療ニーズが高くなり、医療に於いても重度化対策が課題となる。この意味でも、障害高齢者の口腔機能の維持向上を目指した医科歯科連携(口のリハビリテーション)の展開・推進が望まれる。