一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム8
回復期における歯科の役割と医療連携

2023年6月18日(日) 08:20 〜 10:10 第3会場 (3階 G304)

座長:大野 友久(浜松市リハビリテーション病院)

企画:病院歯科委員会

[SY8-3] 回復期リハビリテーション病棟における歯科訪問診療の現状と課題

○田中 公美1 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【略歴】
2014年 岩手医科大学歯学部卒業
2019年 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学終了
2020年 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科 助教

【抄録(Abstract)】
急性期病院で手術や治療を受けた患者は、症状が安定すると回復期病棟・回復期病院に移動する。回復期リハビリテーション病棟は、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなどが共同でリハビリテーションを行い、家庭復帰を目指すための病棟である。 患者には、急性期病院で口腔管理が後手に回っていた者、歯科医院に年単位で通院できなくなっている者、入退院・転院と環境変化のうちに義歯を紛失してしまう者などが存在する。口腔内の状態としては、衛生状態不良、動揺歯、多数歯う蝕、不適合義歯、広範囲に付着した歯石、治療途中のまま歯科外来通院困難となっているケースなど、多様な歯科疾患を認める。脳血管疾患、骨折後の廃用などにより、摂食嚥下障害患者も存在する。 脳血管障害後の患者では口腔機能低下がみられるとの報告や、骨折の原因の一つである転倒では身体機能の低下が一因として挙げられ、その身体機能の低下には咬合支持喪失が関与しているとの報告がある。 これらの患者に対し、必要な咬合支持の回復、口腔ケア、摂食嚥下リハビリテーションといった、歯科治療を行った際の心身の機能評価の改善、予後との関連を評価した報告は少数に留まっている。  回復期における歯科治療に期待される役割は、食生活機能の再建と安定化、および栄養向上である。そのためにも、歯・口腔の機能や将来予後を検討し、患者の予後まで考えたリハビリテーションの視点を持った歯科治療計画を立てることが必要である。急性期から生活期に至るまで、包括的な地域ケアシステムを目指した体制づくりが求められる中、回復期における歯科医療のさらなるエビデンス構築を行っていく必要がある。  私たちは、地域の回復期リハビリテーション病棟で週1回-2回、歯科訪問診療を実施している。この病棟では、口腔管理はリハビリテーションの一環である、と捉え、新規入院患者全員に看護師が口腔内検診の説明を行う。その後、歯科医師による検診を行い、治療が必要な患者に対しては同意が得られれば治療介入を行う。2022年5月から2023年3月までの集計によると、102名中77名(75.5%)の患者に歯科治療の必要性があり、実際に治療介入可能であったのは45名(44.1名)であった。治療内容は、う蝕治療7名(6.9%)、抜歯16名(15.7%、1-11本)、義歯新製8名(7.8%)、義歯調整18名(17.6%)、口腔ケア9名(8.8%)(重複含む)であった。治療開始前に転院・退院となった者は10名(9.8%)、治療途中および継続治療が必要な状態で転院・退院となった者は17名(16.7%)であった。 退院後に歯科との関りが途切れないためにも生活期における医療介護保険サービスとの連携を図り、シームレスな歯科介入システムの構築が必要である。今回のシンポジウムでは、私たちが歯科訪問を行っている回復期リハビリテーション病棟での取り組みと課題について紹介する。