大会長挨拶
福井 次矢 大会長
(聖路加国際病院院長)
聖路加国際大学とInternational Health Humanities Network共催の第9回国際ヘルスヒューマニティーズ学会は、フローレンス・ナイチンゲール生誕200年となる記念すべき2020年に看護教育100周年を迎える聖路加国際大学の記念事業の一環として同大学にて開催されます(過去のConference)。人文学・芸術学・社会科学など学際的な視点からヘルスケアおよび人々の健康・ウェルビーイングを推進する多様な研究者、教育者、実践家が集います。
ヘルスヒューマニティーズとは、メディカルヒューマニティーズ(医療人文学)を前身としますが、対象を医師や医学生に限らずヘルスケアに関わる人すべてに広げている点を特徴とします。メディカルヒューマニティーズは1960年代から主に米国の医学教育の中で展開されてきました。そして10年ほど前にヘルスヒューマニティーズの新しい動きが英国から起こり、現在、世界的な広がりを見せています。本学会の基調講演者である英国ノッティンガム大学のポール・クロフォード博士はこの分野の世界初の教授であり、欧米での研究と研究成果の実社会への還元に尽力されてきました。
先端医科学の発展に伴う課題に対応していくためには、EBM(Evidence Based Medicine)と両輪をなすNBM(Narrative Based Medicine)の実践を踏まえた全人的アプローチが必須です。ヘルスヒューマニティーズとは、健康における社会的要因を踏まえ、人文学・芸術学・社会科学など幅広い視点から健康に関わる問題にアプローチする学際的な新しい分野です。現在、欧米では医療者だけでなく実に多様な人々がこの新分野に携わっています。例えば、医療者にナラティブ・ベイスド・メディスンなどを教える者たち、患者や患者のケアに携わる人々(医療者自身も含む)のウェルビーイング向上のために音楽療法、スピリチュアルケア、アートセラピーなどを実践している人、そして医療系分野に拘わらず健康に関するさまざまなテーマを探求している研究者たちなどです。
英国、米国、日本からの基調講演者と招待講演者による人類学、看護学、医学、政治学など学際的な講演を行います。
以下の講演はすべて同時通訳付きです。
聖路加国際病院 院長
[プロフィール]
「全ての人による全ての人のためのヘルスケア:ヘルスヒューマニティーズの学際的多職種連携力の開発に向けて」
“Health Care By and For All: Cultivating the Interdisciplinary and Interprofessional Power of the Health Humanities”
(日本語。英語への同時通訳付き。)
ノッティンガム大学健康科学部ヘルスヒューマニティーズ領域 教授
[プロフィール]
「ヘルスヒューマニティーズ:創造的な看護へ」
ハーバード大学医学大学院精神医学科 助教
[プロフィール]
“There's a Film for Each of Us: The Role of Film and Television in Preserving Mental Health and Fostering Resilience”
「私たち一人一人のための映画がある:メンタルヘルスの保持とレジリエンス育成における映画とテレビの役割」
(英語。日本語への同時通訳付き。)
東京都立産業技術大学院大学認知症・神経心理学講座 特任教授
[プロフィール]
「音楽を医療現場に活かす:認知症と失語症を中心に」
“Music in Medical Settings: Applications for Dementia and Aphasia”
(日本語。英語への同時通訳付き。)
ケンブリッジ大学中央アジア研究所 シニア外交フェロー / 元衆議院議員
[プロフィール]
「リジリアンスな社会を確実なものに:人間から医療科学まで」
“Ensuring Social Resilience: From Humans to Medical and Health Science”
(日本語。英語への同時通訳付き。)
長い歴史を持つ聖路加国際大学は常に日本の保健医療の最先端に立ってきました。看護学部および看護学研究科のプログラムは長年にわたり日本の看護教育と看護学研究の発展を導いてきました。新しい公衆衛生大学院は国際基準の包括的なカリキュラムを特徴とし、国際色豊かな教員と多様な学生が最先端の研究を行っています。また、聖路加国際病院は国際的な病院評価機構であるJCI(Joint Commission International)の認定を受けている、世界トップクラスの病院です。キリスト教精神の下に大学、大学院、病院が連携し全人医療を目指す聖路加は日本においてヘルスヒューマニティーズをスタートするにふさわしい場所と言えましょう。
また聖路加は美しい浜離宮恩賜庭園や活気ある築地場外市場、伝統的な歌舞伎劇場や華やかな銀座、そして皇居や東京駅に近く、日本の伝統文化、芸術、名所などを楽しめる東京の中心に位置しています。
アジア初のヘルスヒューマニティーズの国際学会に皆さまぜひ奮ってご参加ください。
大会長 福井 次矢
聖路加国際病院 院長
聖路加国際大学キャンパスの紅葉