15:30 〜 15:50
[SY14-04] 「慢性病を生きる」を支えるAAC(拡大・代替コミュニケーション)
ーALSに焦点をあててー
キーワード:AAC、ALS、慢性病
「あなたたちは、パソコンが私にとって、どれだけ大事が分かっていない。」 経験の浅かった私が、人工呼吸器を装着しているALS(amyotrophic lateral sclerosis;筋萎縮性側索硬化症)の方のコミュニケーション装置であるパソコンをうまく設置できなかった時に言っていただいた、今でも大事にしている言葉である。パソコンは、この方にとって唯一意思を伝えることのできるAAC( Augmentative and Alternative Communication;拡大・代替コミュニケーション)であり、人がコミュニケーション手段を奪われることの意味を深く考えることができた経験であった。
AACとは、話すことや書くことなどのコミュニケーションに障害のある人が、残存能力とテクノロジーの活用によって、自分の意思を相手に伝えることである。AACの技法の種類には、大きく分けて口文字などのノンテク、文字盤など身近な材料で作成できる補助手段を利用したローテク、コンピューターなどを活用したハイテクの3つがある。慢性疾患看護分野で、ハイテクエイドであるコミュニケーション機器が必要となる代表的な疾患のひとつとして、冒頭で紹介したALSが挙げられる。
ALSのコミュニケーション障害は、構音・発声障害が主体となり、患者と家族の生活の質を著しく低下させる要因となる。そのため、初期より現在のコミュニケーション状況やコミュニケーションに関する希望、IT機器の使用歴、身体機能評価、支援者の情報などについて確認を行い、コミュニケーション機器導入を見据えた支援を行う。AAC手段を選択するうえでは、それぞれの手段の特性を考慮することが重要である。文字盤は手軽に使える反面、伝えることができる言葉の数が限られ、受け手の読み取り能力が必要となる。コミュニケーション機器では、使用練習が必要となるが一人でも伝達が可能となり、自発的なコミュニケーションができるようになる。ALSでは、構音障害が進行してきた時期に実際に使うAAC手段を選択し練習していくことになるが、多くの患者は症状の進行に伴い精神的にも落ち込みやすい時期となるため、導入がスムーズに行えないことがある。また、急な症状進行によりコミュニケーションそのものを希望しない患者もいる。そうしたなか看護師は、根気強く、多職種や家族と連携しながらひとりひとりに合ったAAC手段を丁寧に選択し、使い分けていっている。そのことが、その人の最大限のコミュニケーション能力を引き出すことを可能にすると考える。
クリティカルケアにおいては、挿管している患者は発声ができず、コミュニケーションが制限されることによるストレスや不安などの存在が推測できる。クリティカルケアでAACアプローチは、慢性疾患と比較しAACの練習に割ける時間は当然短くなる。時間的制約とともに、鎮静レベル、意識障害、病状なども大きく影響し、多大な労力が必要となることが考えられる。また、機器導入における費用も問題になる。しかし、AACを活用したコミュニケーションは、意思決定、医療の質やQOLの向上のためにも重要であり、ハイテクを含めた選択肢が増えることで効果的なコミュニケーションの選択ができる可能性があると考える。今回、主にALS患者への具体的なAAC導入の状況を紹介するなかで、クリティカルケア看護で、患者がコミュニケーションをどのように取りたいのかの希望を考慮し、患者に合わせたタイミングや機能に合わせたAAC活用の可能性を会場の皆様と検討する機会としたい。
AACとは、話すことや書くことなどのコミュニケーションに障害のある人が、残存能力とテクノロジーの活用によって、自分の意思を相手に伝えることである。AACの技法の種類には、大きく分けて口文字などのノンテク、文字盤など身近な材料で作成できる補助手段を利用したローテク、コンピューターなどを活用したハイテクの3つがある。慢性疾患看護分野で、ハイテクエイドであるコミュニケーション機器が必要となる代表的な疾患のひとつとして、冒頭で紹介したALSが挙げられる。
ALSのコミュニケーション障害は、構音・発声障害が主体となり、患者と家族の生活の質を著しく低下させる要因となる。そのため、初期より現在のコミュニケーション状況やコミュニケーションに関する希望、IT機器の使用歴、身体機能評価、支援者の情報などについて確認を行い、コミュニケーション機器導入を見据えた支援を行う。AAC手段を選択するうえでは、それぞれの手段の特性を考慮することが重要である。文字盤は手軽に使える反面、伝えることができる言葉の数が限られ、受け手の読み取り能力が必要となる。コミュニケーション機器では、使用練習が必要となるが一人でも伝達が可能となり、自発的なコミュニケーションができるようになる。ALSでは、構音障害が進行してきた時期に実際に使うAAC手段を選択し練習していくことになるが、多くの患者は症状の進行に伴い精神的にも落ち込みやすい時期となるため、導入がスムーズに行えないことがある。また、急な症状進行によりコミュニケーションそのものを希望しない患者もいる。そうしたなか看護師は、根気強く、多職種や家族と連携しながらひとりひとりに合ったAAC手段を丁寧に選択し、使い分けていっている。そのことが、その人の最大限のコミュニケーション能力を引き出すことを可能にすると考える。
クリティカルケアにおいては、挿管している患者は発声ができず、コミュニケーションが制限されることによるストレスや不安などの存在が推測できる。クリティカルケアでAACアプローチは、慢性疾患と比較しAACの練習に割ける時間は当然短くなる。時間的制約とともに、鎮静レベル、意識障害、病状なども大きく影響し、多大な労力が必要となることが考えられる。また、機器導入における費用も問題になる。しかし、AACを活用したコミュニケーションは、意思決定、医療の質やQOLの向上のためにも重要であり、ハイテクを含めた選択肢が増えることで効果的なコミュニケーションの選択ができる可能性があると考える。今回、主にALS患者への具体的なAAC導入の状況を紹介するなかで、クリティカルケア看護で、患者がコミュニケーションをどのように取りたいのかの希望を考慮し、患者に合わせたタイミングや機能に合わせたAAC活用の可能性を会場の皆様と検討する機会としたい。