第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY6] クリティカルケアの実践に倫理の基盤を築く

2022年6月12日(日) 09:00 〜 10:20 第8会場 (総合展示場 E展示場)

座長:林 優子(関西医科大学)
   大野 美香(国立病院機構名古屋医療センター)
演者:長岡 孝典(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター)
   藤本 理恵(山口大学医学部附属病院)
   乾 早苗(金沢大学附属病院 看護部 ICU)
   餘永 真奈美(一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院)

09:25 〜 09:50

[SY6-02] 集中治療領域で生じやすい倫理的問題とその解決にむけて

○藤本 理恵1 (1. 山口大学医学部附属病院)

キーワード:集中治療、倫理的問題、患者の尊厳

集中治療領域でよく遭遇する倫理的葛藤や問題には、医学的適応があるなかでの治療拒否や中止の要求、医学的適応がない状況での過度な医療や予後が期待できないのに積極的な治療の継続、終末期や緊急時対応の説明不足、限られた医療資源により最適な医療やケアが提供できないなどがあげられる。
 倫理的葛藤や問題が生じる要因の一つに、患者本人の意向が確認できないことがある。患者は生命の危機状態にあり、生死に関わる重大な治療方針を決定しなければならないが、病態や薬物の影響により意識がないことや、意識があっても判断能力が低下していることも少なくない。その場合の判断は代理意思決定を行う家族に委ねられることが多い。しかしその家族も、時間的猶予がなく精神的動揺のなかで治療や患者の生命に関わる選択が求められる。
 また倫理的葛藤や問題に、医師は治療方針に関する迷いや不安など心理的負担を持つことがあり、看護師は治療に関して患者と家族、患者・家族と医師との狭間で、患者の擁護者としてどのように行動すべきか苦悩を抱えることもある。
 その他にも、看護師が抱く倫理的葛藤は、患者の安全と身体拘束に関することや患者への十分なケアができていないこと、患者への声かけや配慮の不足など、患者がひとりの人としての尊厳が尊重されていない場合などに生じやすいのではなかろうか。医療現場では、時折、患者の尊厳を尊重するにはどうすればよいのか思い悩む声が聞かれる。
 患者のいのちの尊厳や人としての尊厳の尊重は、集中治療領域に限ったことではなく看護師としての基本的姿勢である。しかし、日々の仕事に精一杯で、ケアを振り返ることや考えることができていない場合もあるかもしれない。もちろん患者の全身管理が重要なのはいうまでもないが、同時に患者や家族の立ち位置に身を置き、寄り添い、生活者としての患者、ひとりの人としての患者に向き合い支援していくことが重要である。患者や家族の思いに気付くこと、すくいあげること、看護師が患者全体像をみて支援することが、患者や家族にとっての良い医療につながると考える。
 今回、臨床現場で看護師が抱きやすい倫理的葛藤や問題をあげ、それにどのように対応しているのかを紹介し、解決に向けた具体的な取り組みを皆さんと一緒に考えていきたい。