大会声明
2023 年 7 月 2 日
日本家庭科教育学会 第 66回大会声明
日本家庭科教育学会は、第 66 回大会において、次の声明を発表します。2016年・2017年の学習指導要領改訂からすでに6年余り経過しました。子どもたちに資質・能力をはぐくむために、自分の生活や地域を見つめて課題を設定し、様々な見方や考え方から検討したり探究したりして、より良い生活に向けた解決を見出す学習が積み重ねられて今日に至ります。2020年1月からは新型コロナウィルス感染 症のパンデミックによって、実践的・体験的な家庭科の学習が不可能となり、教育現場では実習を伴う家庭科の授業を行うことができない時期が続きました。
しかし、コロナ禍において、個別最適な学びを保障するICT活用が学校現場に浸透したことで、テクノロジーを有効活用する新たな授業の形が生まれています。家庭科教育を推進するうえで、社会の変化がもたらす技術革新に、今後も目を向けていく必要があるでしょう。このような社会状況だからこそ、家庭科で大切にしてきた実践的・体験的な学びの意義を問い直し、対面でなければ不可能な教育の価値を明らかにする必要があります。
2022年度の本学会の事業として、家庭科教育の基盤となる理論の整理を試みることとし、家庭科理論研究プロジェクトを発足させ、18名のメンバーで研究会を重ねてまいりました。その成果は、間もなく書籍として刊行される予定です。2022年8月のIFHEアトランタ大会では、本学会第64回大会のラウンドテーブルの成果をポスター発表し、日本の家庭科教育の特長を世界に向けて発信しました。
2022年度12月の例会では、「ウィズコロナ時代の家庭科教育―家庭科における実践・体験の意義を問い直す―」というテーマで、シンポジウムを開催しました。調理実習、ふれあい体験、被服製作実習に焦点を当て、3名の登壇者の提案から、家庭科における実践的・体験的活動の再検討を試みました。
2023年7月の第66回大会では、家庭科教育理論研究の国際的展開として、オンラインでオーストラリアとつなぎ、「家庭科における〈知〉とは何か-Home Economics Literacy概念を再考する-」をテーマに基調講演とシンポジウムを行いました。基調講演では国際家政学会(IFHE)の家庭科教育理論研究を牽引している研究者である、Donna Pendergast 教授をお招きし、氏の提唱するHome Economics Literacy概念を取り上げ、国際的な見地から、家庭科教育の本質を問い直すことができました。シンポジウムでは、他国との比較から日本の家庭科教育の特色が明らかになり、市民性の教育という視点や資質・能力のとらえなどが紹介され、家庭科教育の方向性を提起することができました。
コロナ禍はまだ、完全に終息してはいません。しかし、徐々に平常の教育活動が戻りつつある現在、理論的な足場を確認し、子どもたちの生きる力を豊かにはぐくむ授業の更なる発展を目指し、家庭科教育の意義と成果を発信し続けます。