2:00 PM - 2:15 PM
[R1-03] Rare gem-quality blue-green and green-blue haüyne
Keywords:Haüyne, Sodalite, Single Crystal X-Ray Diffraction, X-Ray Fluorescence, Spectroscopy
アウインはソーダライトグループに属する立方晶系の準長石鉱物の一種であり、理想的な化学組成はNa3Ca(Si3 Al3)O12(SO4)となる。鉱物学的には青、白、黒、緑、黄、赤、無色などのものが知られているが、宝石として一般に流通しているものは鮮やかな青色を呈するもので、その多くはドイツ西部のアイフェル地域産である。アイフェル地域のアウインはフォノライトマグマから結晶化したものとされており、サニディン、ノゼアン、ネフェリンなどと共生している。今回、写真に示すようなアフガニスタン産の青緑色と緑青色のアインを検査し、色の原因について検討を行ったので報告する。
本年2月、筆者らは青緑色(0.860 ct)と緑青色(0.873 ct)の原石2点を検査した。試料の提供者によると、アフガニスタンのバダフシャーン地域で“ラピスラズリ”(ラズーライト、Na7Ca(Al6Si6O24)(S3)-·H2O)やソーダライト(Na4(Si3Al3)O12Cl)が採掘される鉱山の近辺から新しく産出したものであり、“ハックマナイト”(フォトクロミズムを示すソーダライト)だと思われていたらしい。バダフシャーン地域は古くから“ラピスラズリ”の有名な産地であり、ラズーライトを始め、アウイン、ソーダライト、アフガナイトなど多種多様な準長石鉱物を産出している。原石のまま予備的に蛍光X線分析を行った結果、硫黄の含有量が高く、塩素の含有量が低いため、“ハックマナイト”と短絡的な結論は得られないことがわかった。そのため、これらの原石の正確な鉱物種を明らかにすることを目的に分析を行うこととした。
本研究では、多種多様な準長石鉱物の可能性を考えるため、最初に単結晶X線回折分析を行った。その結果、2点の原石試料は立方晶系に属することが確認できたが、変調構造であったため、詳細を明らかにするには至らなかった。ただ、他の結晶系に属する準長石鉱物を排除できたため、ソーダライトグループに絞り込めた。その後、2点の原石を研磨して平滑な面を作成し、CGLが所有するファセット加工された鮮やかな青色のアウインとソーダライトのサンプル2点ずつと比較分析を行った。検査試料の屈折率は2つとも1.496であり、CGLのアウインは1.494と1.499、ソーダライトは1.480と1.485であった。蛍光X線元素分析の結果により、原石試料の化学式は2点ともNa3.3Ca0.7(Si2.9Al3.1)O12(SO4)0.9Cl0.1になった。
赤外反射スペクトルとラマンスペクトルはアウインのスペクトルと一致し、ソーダライトのスペクトルとは相違していた。以上の分析結果から、“ハックマナイト”いわれていた2点の原石はアウインであると結論付けられた。しかし、一般に市場に流通するアウインもCGLの試料も鮮やかな青色を呈しており、本研究に用いた2点の原石は明らかに色調が異なっている。そのため、続いてこの色の違いについての検討を行った。
N. V. Chukanov et al. (2022) によると、緑色を呈するソーダライトグループ鉱物の色の原因は基本的に黄色の発色団S2•-と青色の発色団S3•-の2種類のラジカルイオンである。本研究に用いた原石サンプルのラマンスペクトルは、2点ともS3•-によるピークが確認されたが、青緑色のサンプルのスペクトルのみS2•-によるショルダーが確認できた。また、CGLのサンプルからはS2•-による吸収を確認できなかった。一方、紫外可視吸収スペクトルにおいて2点ともS2•-関連の400 nm中心吸収とS3•-関連の600 nm中心吸収が確認できた。しかも、400 nm中心吸収が明らかに600 nm中心吸収よりも強くなっていた。CGLのサンプルからは400 nm中心吸収はほとんどなかった。
D. M. Kondo et al. (2008) はバダフシャーン産ターコイズ色のアウインについて報告しているが、その産状については言及しなかった。ただし、バダフシャーンのラピスラズリはスルカンから産出すると報告され、本研究で測定したアウインも同じ母岩から産出される可能性が高いと考えられる。発色団S2•-とS3•-は安定な温度領域が異なり、700 ℃を超えるとS3•-が優勢になる。一般的な宝石品質の鮮やかな青色のアウインは800 ℃も超えるフォノライトマグマに由来し、今回の検査試料はより温度の低いスカルンで生成したと推定することができ、両者の地質学的な生成温度の違いがこれらの色の相違を生み出したのかもしれない。
本年2月、筆者らは青緑色(0.860 ct)と緑青色(0.873 ct)の原石2点を検査した。試料の提供者によると、アフガニスタンのバダフシャーン地域で“ラピスラズリ”(ラズーライト、Na7Ca(Al6Si6O24)(S3)-·H2O)やソーダライト(Na4(Si3Al3)O12Cl)が採掘される鉱山の近辺から新しく産出したものであり、“ハックマナイト”(フォトクロミズムを示すソーダライト)だと思われていたらしい。バダフシャーン地域は古くから“ラピスラズリ”の有名な産地であり、ラズーライトを始め、アウイン、ソーダライト、アフガナイトなど多種多様な準長石鉱物を産出している。原石のまま予備的に蛍光X線分析を行った結果、硫黄の含有量が高く、塩素の含有量が低いため、“ハックマナイト”と短絡的な結論は得られないことがわかった。そのため、これらの原石の正確な鉱物種を明らかにすることを目的に分析を行うこととした。
本研究では、多種多様な準長石鉱物の可能性を考えるため、最初に単結晶X線回折分析を行った。その結果、2点の原石試料は立方晶系に属することが確認できたが、変調構造であったため、詳細を明らかにするには至らなかった。ただ、他の結晶系に属する準長石鉱物を排除できたため、ソーダライトグループに絞り込めた。その後、2点の原石を研磨して平滑な面を作成し、CGLが所有するファセット加工された鮮やかな青色のアウインとソーダライトのサンプル2点ずつと比較分析を行った。検査試料の屈折率は2つとも1.496であり、CGLのアウインは1.494と1.499、ソーダライトは1.480と1.485であった。蛍光X線元素分析の結果により、原石試料の化学式は2点ともNa3.3Ca0.7(Si2.9Al3.1)O12(SO4)0.9Cl0.1になった。
赤外反射スペクトルとラマンスペクトルはアウインのスペクトルと一致し、ソーダライトのスペクトルとは相違していた。以上の分析結果から、“ハックマナイト”いわれていた2点の原石はアウインであると結論付けられた。しかし、一般に市場に流通するアウインもCGLの試料も鮮やかな青色を呈しており、本研究に用いた2点の原石は明らかに色調が異なっている。そのため、続いてこの色の違いについての検討を行った。
N. V. Chukanov et al. (2022) によると、緑色を呈するソーダライトグループ鉱物の色の原因は基本的に黄色の発色団S2•-と青色の発色団S3•-の2種類のラジカルイオンである。本研究に用いた原石サンプルのラマンスペクトルは、2点ともS3•-によるピークが確認されたが、青緑色のサンプルのスペクトルのみS2•-によるショルダーが確認できた。また、CGLのサンプルからはS2•-による吸収を確認できなかった。一方、紫外可視吸収スペクトルにおいて2点ともS2•-関連の400 nm中心吸収とS3•-関連の600 nm中心吸収が確認できた。しかも、400 nm中心吸収が明らかに600 nm中心吸収よりも強くなっていた。CGLのサンプルからは400 nm中心吸収はほとんどなかった。
D. M. Kondo et al. (2008) はバダフシャーン産ターコイズ色のアウインについて報告しているが、その産状については言及しなかった。ただし、バダフシャーンのラピスラズリはスルカンから産出すると報告され、本研究で測定したアウインも同じ母岩から産出される可能性が高いと考えられる。発色団S2•-とS3•-は安定な温度領域が異なり、700 ℃を超えるとS3•-が優勢になる。一般的な宝石品質の鮮やかな青色のアウインは800 ℃も超えるフォノライトマグマに由来し、今回の検査試料はより温度の低いスカルンで生成したと推定することができ、両者の地質学的な生成温度の違いがこれらの色の相違を生み出したのかもしれない。