3:45 PM - 4:00 PM
[R1-09] Minerals from Nagatare area, Fukuoka
Keywords:Nagatare
1. はじめに
2023年に福岡石の会は創立90周年を迎えました。その記念事業の1つとして5月13日-21日に福岡市科学館主催の「はっけん!福岡のすごい石展」を特別協力で開催しました。この展覧会では福岡市科学館に保管されている福岡市天然記念物「長垂のリチウムペグマタイト鉱物標本522点」の中から代表的な標本約70点を中心に展示しました。また,5月13日に福岡市科学館のサイエンスホールで福岡石の会90周年事業で記念式典・記念講演会,14日に「福岡石の会ONEDAY博物館~身近な鉱物の世界~」のイベントを開催し,会期中に約5800名の来場者がありました。このイベントで科学館所有の長垂標本を含め既採集標本の再検討および文献調査を行い,長垂地域で約100種類の鉱物が産出していることが明らかになりました。ここではその再検討の結果と産出鉱物とその特徴について報告します。
2. 試料および実験
試料は科学館所有及び既採集の長垂標本で,また,今回,天然記念物指定地域のペグマタイト岩脈の現状変更の際に出た試料と蛇紋岩分布地とその周辺の野外調査を行い,分析試料に加えた。一部薄片を作成し,肉眼及び偏光・反射顕微鏡観察を行った.構成鉱物はX線回折分析(Rigaku Ultima Ⅳ,Rigaku RINT RAPID Ⅱ)で決定した.化学組成分析,微細組織観察には九州大学理学部地球惑星科学教室のSEM (JEOL JSM-7001F) 及びFE-EPMA(JEOL JXA-8530F)を用いた。
3. 結果
長垂地域の産出鉱物は70種程度とされていたが,約100種に及ぶ鉱物の大産地であることが明らかになった。以下にそれらの鉱物を示す。 <元素鉱物>:自然蒼鉛.<硫化鉱物>:黄鉄鉱,黄銅鉱.<酸化鉱物>:石英,(コランダム),亜鉛スピネル,クリプトメレーン,ホランド鉱,軟マンガン鉱,フッ素灰マイクロ石,磁鉄鉱,クローム鉄鉱,褐鉄鉱,リシオフォル鉱.<炭酸塩鉱物>:孔雀石,泡蒼鉛,灰泡蒼鉛土.<リン酸塩鉱物>:モナズ石,ゼノタイム,フッ素燐灰石,アンブリゴナイト,モンブラサイト,ラクロワ石,ビータニエミ石,モリノー石,ワード石,クランダル石,ゴヤス石,トリプル石,ロバーツ石,ケララ石,燐灰ウラン石,メタ燐灰ウラン石,燐銅ウラン石,メタ燐銅ウラン石,ウェイランド石,プチジーン石,スムルコベッツ石.<バナジン酸塩鉱物>:ナミビア石,ヘヒツベルグ石,単斜ビスバナ石,プッチャー石.<ニオブ・タンタル酸塩鉱物>:マンガンコルンブ石,鉄コルンブ石,マンガンタンタル石,鉄タンタル石,蒼鉛タンタル石,安タンタル石,(フェルグソン石).<珪酸塩鉱物>:苦土かんらん石,満礬柘榴石,鉄礬柘榴石,灰礬柘榴石,ジルコン,チタン石,珪蒼鉛石,トロゴム石,トール石,トパーズ,単斜灰簾石,緑簾石,褐簾石,ベスブ石,紅柱石,透輝石,普通角閃石,透閃石,緑閃石,緑柱石,リシア電気石,フッ素リシア電気石,ロスマン電気石,フッ素鉄電気石,鉄電気石,金雲母,白雲母,ポリリチオ雲母,トリリチオ雲母,チンワルド雲母,イライト,苦土蛭石,クッカアイト,モンモリロナイト,バイデライト,トスダイト,ハロイサイト,カオリナイト,カオリン,クリノクロア(緑泥石),蛇紋石,リザーダイト,クリノクリソタイル,タルク,正長石,微斜長石,曹長石,ペタル石,ポルクス石.以上の96種(独立種),なお,下線を引いた鉱物名は独立種名ではない。()は私たちが未確認の鉱物。 これまでに27種(斜体字で示した)を報告したが,今回新たに10種(太字)を確認した。まだ,フッ素の定量分析が必要なマイクロ石族鉱物(CaとNaの2種の存在は確認),未同定のバナジン酸塩鉱物,追加の試験が必要なカオリン/モンモリロナイト混合層鉱物などの粘土鉱物があり100種を超えると思われる。この多数の鉱物種を産出したのはLiペグマタイトの存在が挙げられるが,その形成末期に粘土鉱物(イライト,クッカイト,トスダイト,モンモリロナイト,カオリン鉱物)を生じる変質作用で多数の二次リン酸塩鉱物(Fig.1),バナジン酸塩鉱物が形成されたことによると考えられる。
2023年に福岡石の会は創立90周年を迎えました。その記念事業の1つとして5月13日-21日に福岡市科学館主催の「はっけん!福岡のすごい石展」を特別協力で開催しました。この展覧会では福岡市科学館に保管されている福岡市天然記念物「長垂のリチウムペグマタイト鉱物標本522点」の中から代表的な標本約70点を中心に展示しました。また,5月13日に福岡市科学館のサイエンスホールで福岡石の会90周年事業で記念式典・記念講演会,14日に「福岡石の会ONEDAY博物館~身近な鉱物の世界~」のイベントを開催し,会期中に約5800名の来場者がありました。このイベントで科学館所有の長垂標本を含め既採集標本の再検討および文献調査を行い,長垂地域で約100種類の鉱物が産出していることが明らかになりました。ここではその再検討の結果と産出鉱物とその特徴について報告します。
2. 試料および実験
試料は科学館所有及び既採集の長垂標本で,また,今回,天然記念物指定地域のペグマタイト岩脈の現状変更の際に出た試料と蛇紋岩分布地とその周辺の野外調査を行い,分析試料に加えた。一部薄片を作成し,肉眼及び偏光・反射顕微鏡観察を行った.構成鉱物はX線回折分析(Rigaku Ultima Ⅳ,Rigaku RINT RAPID Ⅱ)で決定した.化学組成分析,微細組織観察には九州大学理学部地球惑星科学教室のSEM (JEOL JSM-7001F) 及びFE-EPMA(JEOL JXA-8530F)を用いた。
3. 結果
長垂地域の産出鉱物は70種程度とされていたが,約100種に及ぶ鉱物の大産地であることが明らかになった。以下にそれらの鉱物を示す。 <元素鉱物>:自然蒼鉛.<硫化鉱物>:黄鉄鉱,黄銅鉱.<酸化鉱物>:石英,(コランダム),亜鉛スピネル,クリプトメレーン,ホランド鉱,軟マンガン鉱,フッ素灰マイクロ石,磁鉄鉱,クローム鉄鉱,褐鉄鉱,リシオフォル鉱.<炭酸塩鉱物>:孔雀石,泡蒼鉛,灰泡蒼鉛土.<リン酸塩鉱物>:モナズ石,ゼノタイム,フッ素燐灰石,アンブリゴナイト,モンブラサイト,ラクロワ石,ビータニエミ石,モリノー石,ワード石,クランダル石,ゴヤス石,トリプル石,ロバーツ石,ケララ石,燐灰ウラン石,メタ燐灰ウラン石,燐銅ウラン石,メタ燐銅ウラン石,ウェイランド石,プチジーン石,スムルコベッツ石.<バナジン酸塩鉱物>:ナミビア石,ヘヒツベルグ石,単斜ビスバナ石,プッチャー石.<ニオブ・タンタル酸塩鉱物>:マンガンコルンブ石,鉄コルンブ石,マンガンタンタル石,鉄タンタル石,蒼鉛タンタル石,安タンタル石,(フェルグソン石).<珪酸塩鉱物>:苦土かんらん石,満礬柘榴石,鉄礬柘榴石,灰礬柘榴石,ジルコン,チタン石,珪蒼鉛石,トロゴム石,トール石,トパーズ,単斜灰簾石,緑簾石,褐簾石,ベスブ石,紅柱石,透輝石,普通角閃石,透閃石,緑閃石,緑柱石,リシア電気石,フッ素リシア電気石,ロスマン電気石,フッ素鉄電気石,鉄電気石,金雲母,白雲母,ポリリチオ雲母,トリリチオ雲母,チンワルド雲母,イライト,苦土蛭石,クッカアイト,モンモリロナイト,バイデライト,トスダイト,ハロイサイト,カオリナイト,カオリン,クリノクロア(緑泥石),蛇紋石,リザーダイト,クリノクリソタイル,タルク,正長石,微斜長石,曹長石,ペタル石,ポルクス石.以上の96種(独立種),なお,下線を引いた鉱物名は独立種名ではない。()は私たちが未確認の鉱物。 これまでに27種(斜体字で示した)を報告したが,今回新たに10種(太字)を確認した。まだ,フッ素の定量分析が必要なマイクロ石族鉱物(CaとNaの2種の存在は確認),未同定のバナジン酸塩鉱物,追加の試験が必要なカオリン/モンモリロナイト混合層鉱物などの粘土鉱物があり100種を超えると思われる。この多数の鉱物種を産出したのはLiペグマタイトの存在が挙げられるが,その形成末期に粘土鉱物(イライト,クッカイト,トスダイト,モンモリロナイト,カオリン鉱物)を生じる変質作用で多数の二次リン酸塩鉱物(Fig.1),バナジン酸塩鉱物が形成されたことによると考えられる。