一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

口頭講演

R3:高圧科学・地球深部

2023年9月16日(土) 09:00 〜 12:00 822 (杉本キャンパス)

座長:川添 貴章(広島大学)、境 毅(愛媛大学)、西 真之(大阪大学)

09:00 〜 09:15

[R3-01] 第一原理計算によるアンチゴライトのポリソマティズムの研究

*土屋 旬1、井上 紗綾子1、溝口 大河1 (1. 愛媛大学)

キーワード:第一原理計算、アンチゴライト

蛇紋岩は、かんらん岩と沈み込むスラブ中の含水鉱物の分解によって放出される水との反応によってマントルウェッジで形成されることが知られている [e.g. Schmidt and Poli,1998]。部分的に蛇紋岩化したかんらん岩はマントルウェッジの重要な水の貯蔵庫である可能性があり、蛇紋岩の脱水は島弧火山の生成に重要な貢献をしていると考えられている。このことは、稍深発部地震との関連でも広く研究されている [例えば Irifune et al. , 1996]。
地球内部への水の輸送過程を調べるためには、アンチゴライトの熱力学的安定性と弾性特性を明らかにする必要がある。アンチゴライトは蛇紋石の高温多形であり、沈み込み帯における重要な含水鉱物である。この相は圧力と温度の条件によってポリソマティズムを示すことが報告されている。これまでの電顕観察により、m値(m = a軸に沿った波長におけるSiO4四面体の数)が圧力・温度によって増減することが報告されている[e.g. Wunder et al. 2001]。しかし、沈み込む海洋プレートの圧力・温度条件に沿ったアンチゴライトの安定なポリソームに関する構造的・熱力学的な裏付けは十分ではない。
本研究では、いくつかの異なる m 値を持つアンチゴライトの構造と弾性を 第一原理計算によって調べ、沈み込む海洋プレートにおけるアンチゴライトの安定なポリソームについて議論する。