一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

口頭講演

R3:高圧科学・地球深部

2023年9月16日(土) 14:00 〜 15:00 822 (杉本キャンパス)

座長:川添 貴章(広島大学)、境 毅(愛媛大学)、西 真之(大阪大学)

14:15 〜 14:30

[R3-13] 静的圧縮によるアルミニウムの微細組織の形成過程

*奥地 拓生1,2、田中 友登2,1、富岡 尚敬3、佐野 智一4、松田 朋己4、荒河 一渡5、瀬戸 雄介6 (1. 京都大・複合研、2. 京都大・院工・機械、3. 海洋研究開発機構・高知コア研、4. 阪大・院工、5. 島根大・たたらセンター、6. 大阪公立大・院理)

キーワード:金属微細組織、静的高圧力、応力場、転位、アルミニウム

アルミニウムは代表的な軽金属材料の一つであり、その軽さ、加工しやすさ、延性を活かして多種多様な工学の用途に使われている。純金属として製造されたアルミニウムはそのままでは柔らかすぎるので、強い塑性変形(Severe Plastic Deformation: SPD)の手法によって強化される。SPDによってアルミニウムが強化される際には、その微細組織中の転位密度の増加が特に重要である。強化されたアルミニウムが、オリジナルの特徴である延性を大きく失わないようにするためには、超微細結晶粒が微細組織内部に形成される必要がある.そこで本研究では、静的な高圧力の環境をアルミニウムに与えながらSPDを引き起こすことで微細組織を形成させつつ、転位の密度増加や超微細結晶粒化等の組織形成過程を、従来とは異なる形で制御することを試みた。 特に高密度転位と超微細結晶粒を共存させ得る方法として、高圧力の環境に由来する組織形成の特徴的な過程を調べた。実験ではダイアモンドアンビルセル型圧力発生装置を用いて多様な圧縮条件と圧縮方法でアルミニウムを静的に圧縮しつつ変形させ,ひずみ量をできる限り大きく増加させた。得られた試料を透過型電子顕微鏡で観察することで微細組織の高分解能観察を行った。以上の実験の結果から、静的な高圧力環境でSPDが進む際の転位の増殖と超微細結晶化の機構を観察した。また超微細結晶化する際の転位の再配列の過程を段階的に可視化してその全体像を解明した。以上の手順により静的な高圧力環境におけるアルミニウムの微細組織の形成の過程を支配する要因を明らかにした。