9:00 AM - 9:15 AM
[R4-01] Borehole core analysis of Hiroshima Granite: Depth variation of permeability and porosity and implications for weathering rates
Keywords: Granite, Permeability, Porosity, Diffusion, Weathering rate
中国地方には,花崗岩とその風化物が広く分布する。花崗岩の風化の進行に伴い,初生鉱物が溶解すると共に鉱物粒子同士の結合が分離し,間隙率や浸透率(水の流れやすさ)が増大する。本研究では,東広島市のががら山において地表から20 mの深さまで掘削された花崗岩ボーリングコアを対象として,硬度・間隙率・浸透率の深さ変化を調べ,得られた結果の含意を風化の速度論的観点から考察した。
ボーリングコアの観察から,母岩の風化とは直接関係ない堆積物の可能性がある地表付近を除いて,深さ2.5-10 mの部分に注目して分析を行った。まず,リバウンド式硬さ計で深さ約10 cmおきに硬度を測定した。その結果,深さ約5 mより浅い部分の硬度は概ね測定下限以下であり,最も風化が進んだ状態と見なされた。約5-8 mでは,深さの増大と共に,全体として硬度が上昇し風化程度が低下した。約8 mより深い部分の硬度は高い値でほぼ一定であり,未風化状態と見なされた。
硬度の測定結果を基に,風化程度が異なる5箇所(深さ2.8,5.2,6.2,7.6,9.3 m)を選び,間隙率φ(外部に開いた間隙)と浸透率kを測定した。φの値は,φ = (水飽和重量-乾燥重量)/水の密度/試料体積で算出した。kの値は,kが小さい場合は透水試験で,kが大きい場合は透気試験で測定した。5箇所の測定点ではφ,k共に深部ほど低下した。また,硬度-φ,硬度-kにはある程度よい相関がみられた。
岩石の風化は,構成鉱物から溶出した元素が,間隙水の流れ(移流)と水中の拡散で移動することにより進行する。移流と拡散の大小関係を示す値としてペクレ数Pe が用いられる[1]。Pe = UL/Daであり(U :平均流速,L:代表長さ,Da:みかけの拡散係数), Pe >1では移流が支配的,Pe <1では拡散が支配的になる。Uはダルシー流速/φに相当し,U = (kρg/μφ)i で求まる(ρ:水の密度,g:重力加速度,μ:水の粘度,i:動水勾配)。Daの値は,従来報告されている有効拡散係数De (=Daφ)とφの関係式[2]から推定できる。
連続的な深さ変化が得られている硬度の測定結果と,硬度とφ,kの相関式に基づき,φ,k,Daについても連続的な深さ変化を評価した。さらに,それらの値を用いて,Peの深さ変化を見積もった。Lやiの値によりPeの値は変わるものの,一例としてL = 1 mm,i = 0.1 - 1とすると,最も風化が進んだ状態に相当する深さ約5 mより浅部では,概ねPe >1の部分が卓越し,風化速度は主に移流で支配されると考えられる。一方,深さ約6.5 mより深部では,割れ目近傍を除くと概ねPe <1の部分が卓越し,風化速度は主に拡散で支配されると考えられる。
[1] Lasaga A.C. (1998) Kinetic theory in the earth sciences. Princeton University Press, pp. 811.
[2] Nishiyama K., Nakashima S., Tada R., and Uchida T. (1990) Diffusion of an ion in rock pore water and its relation to pore characteristics. Mining Geology, 40(5), 323-336.
ボーリングコアの観察から,母岩の風化とは直接関係ない堆積物の可能性がある地表付近を除いて,深さ2.5-10 mの部分に注目して分析を行った。まず,リバウンド式硬さ計で深さ約10 cmおきに硬度を測定した。その結果,深さ約5 mより浅い部分の硬度は概ね測定下限以下であり,最も風化が進んだ状態と見なされた。約5-8 mでは,深さの増大と共に,全体として硬度が上昇し風化程度が低下した。約8 mより深い部分の硬度は高い値でほぼ一定であり,未風化状態と見なされた。
硬度の測定結果を基に,風化程度が異なる5箇所(深さ2.8,5.2,6.2,7.6,9.3 m)を選び,間隙率φ(外部に開いた間隙)と浸透率kを測定した。φの値は,φ = (水飽和重量-乾燥重量)/水の密度/試料体積で算出した。kの値は,kが小さい場合は透水試験で,kが大きい場合は透気試験で測定した。5箇所の測定点ではφ,k共に深部ほど低下した。また,硬度-φ,硬度-kにはある程度よい相関がみられた。
岩石の風化は,構成鉱物から溶出した元素が,間隙水の流れ(移流)と水中の拡散で移動することにより進行する。移流と拡散の大小関係を示す値としてペクレ数Pe が用いられる[1]。Pe = UL/Daであり(U :平均流速,L:代表長さ,Da:みかけの拡散係数), Pe >1では移流が支配的,Pe <1では拡散が支配的になる。Uはダルシー流速/φに相当し,U = (kρg/μφ)i で求まる(ρ:水の密度,g:重力加速度,μ:水の粘度,i:動水勾配)。Daの値は,従来報告されている有効拡散係数De (=Daφ)とφの関係式[2]から推定できる。
連続的な深さ変化が得られている硬度の測定結果と,硬度とφ,kの相関式に基づき,φ,k,Daについても連続的な深さ変化を評価した。さらに,それらの値を用いて,Peの深さ変化を見積もった。Lやiの値によりPeの値は変わるものの,一例としてL = 1 mm,i = 0.1 - 1とすると,最も風化が進んだ状態に相当する深さ約5 mより浅部では,概ねPe >1の部分が卓越し,風化速度は主に移流で支配されると考えられる。一方,深さ約6.5 mより深部では,割れ目近傍を除くと概ねPe <1の部分が卓越し,風化速度は主に拡散で支配されると考えられる。
[1] Lasaga A.C. (1998) Kinetic theory in the earth sciences. Princeton University Press, pp. 811.
[2] Nishiyama K., Nakashima S., Tada R., and Uchida T. (1990) Diffusion of an ion in rock pore water and its relation to pore characteristics. Mining Geology, 40(5), 323-336.