11:30 AM - 11:45 AM
[R5-10] Mineralogical diversity of the C1 lithologies in the Kaidun meteorite
[Presentation award entry]
Keywords:Carbonaceous chondrite, Aqueous alteration, Petrological type 1, Carbonate minerals, Iron sulfides
はじめに:Kaidun隕石はポリミクト角礫岩であり、コンドライト物質にはC1、C2、CM1、CM2、CV3、EH3-5、EL3、OC関連物質等、様々な物質が含まれる。本研究はKaidunにおける強い水質変成を受けたC1物質(Kaidun C1)に焦点を当てる。C1は岩石学的特徴に乏しく、その分類が難しいことが知られているが、近年の新規に発見された隕石や小惑星リュウグウ試料等に関する研究からその多様性が強調されている(e.g., Russell+ 2022, Nakamura+ 2022)。Kaidun C1は、Kaidunの母天体に集積する以前に異なる小惑星母天体にて水質変成を受けたことが指摘されており、それらを分析することで様々な小惑星母天体の形成・進化史に定量的な制約を与えることが可能である。また、Kaidunは多様な起源の岩片を含む他に類を見ない隕石のため、そのC1物質を調べることで、ungrouped C1など、C1の多様性をさらに拡大する物質の発見が期待される。そこで、本研究ではKaidun C1を既知のC1であるCI1やCM1、CR1などと比較し、C1物質の多様性に関して体系的に理解することを目的としている。また、Kaidun C1に含まれる主要鉱物である層状ケイ酸塩や鉄硫化物、炭酸塩の詳細な化学組成分析が先行研究にて網羅的に行われていないことから、特にこれらの分析を行った。
試料と分析手法:本研究ではKaidunの6枚の研磨片について分析を行った。試料の観察や分析には東京大学 地球惑星科学専攻のFE-EPMA (JEOL JXA-8530F)を用いた。
結果と考察:6試料の観察から発見されたC1関連岩片は45個である。このうち38個の岩片は定量分析を行う上で十分な大きさの粗粒な硫化物を含んでおり、342個の硫化物を分析した。硫化物は主にpyrrhotite、pentlanditeで一部はtroiliteであると考えられる(図1)。
さらに21個の岩片でdolomiteが観察され、187個の粒子について分析を行った。Dolomiteの含まれる岩片のマトリックス組織はCIのものと類似する特徴があり、また、ほとんどのdolomite組成はCaよりもMgに富んでおり、CIで見られる傾向と一致している(Johnson & Prinz 1993, de Leuw+ 2010)。一方で、一部でCaに富む組成の粒子が存在している(図2)。このような組成のdolomiteはCIでは見られず、既知の隕石ではCMのみで見られる特徴であり、このような特徴がCI類似岩片で観測された点が特徴的である。
また、本研究ではコンドリュール仮晶を含む岩片で、既知のKaidun CM1と組織的にも異なるC1岩片を見出した。変質したコンドリュールにはAlに富む層状ケイ酸塩が含まれており、CR1との関連が推測される(Weisberg & Huber 2007)。他にもCV1-2と考えられる特異な岩片も観察され、Kaidunですでに報告されているCV3岩片がさらに強い水質変成を受けたものである可能性がある(Tomeoka & Ohnishi 2011)。
結論:先行研究ではKaidunにおける炭素質岩片が、CI、CM、CRのそれぞれのグループの範囲に収まらず、場合によっては中間に位置するような酸素同位体的特性を持つことが報告されている(MacPherson+ 2009)。また、岩石・鉱物学的観察を加え、Kaidunの炭素質岩片は初期のΔ18O値に関わらず(前駆物質がCM様であっても)、CI-CRと同様の条件で変質したと結論づけている。このようにKaidun炭素質岩片には少なくともCI、CM、CRを包含する連続した物質が存在するという考えが支持されている。
本研究においてKaidun C1岩片の組織観察、及び鉱物化学組成分析を行った結果、半数以上の岩片はCIと関連していることが示唆された。一方で、CI類似岩片において、いくつかのdolomiteの分析からはCMとの関連性が見出された。この結果はKaidun炭素質岩片にCI-CMの中間的な物質が存在することを鉱物学的分析から示したと同時に、そのような特性がC1物質においても観察されることを見出した。
また、コンドリュール仮晶を含むC1岩片が観察され、CR1やCV1-2との関連が示された。これらの岩片は前駆物質がCR3やCV3であり、それらがCI-CRと同様の条件で、岩石学的タイプ1に分類されるほど強い水質変成を受けた可能性を示している。この観察結果からは、Kaidun C1岩相の更なる多様性の広がりを示すとともに、CI-CMを含む連続性がさらに拡張され、CRやCVをも含む可能性を示した。
試料と分析手法:本研究ではKaidunの6枚の研磨片について分析を行った。試料の観察や分析には東京大学 地球惑星科学専攻のFE-EPMA (JEOL JXA-8530F)を用いた。
結果と考察:6試料の観察から発見されたC1関連岩片は45個である。このうち38個の岩片は定量分析を行う上で十分な大きさの粗粒な硫化物を含んでおり、342個の硫化物を分析した。硫化物は主にpyrrhotite、pentlanditeで一部はtroiliteであると考えられる(図1)。
さらに21個の岩片でdolomiteが観察され、187個の粒子について分析を行った。Dolomiteの含まれる岩片のマトリックス組織はCIのものと類似する特徴があり、また、ほとんどのdolomite組成はCaよりもMgに富んでおり、CIで見られる傾向と一致している(Johnson & Prinz 1993, de Leuw+ 2010)。一方で、一部でCaに富む組成の粒子が存在している(図2)。このような組成のdolomiteはCIでは見られず、既知の隕石ではCMのみで見られる特徴であり、このような特徴がCI類似岩片で観測された点が特徴的である。
また、本研究ではコンドリュール仮晶を含む岩片で、既知のKaidun CM1と組織的にも異なるC1岩片を見出した。変質したコンドリュールにはAlに富む層状ケイ酸塩が含まれており、CR1との関連が推測される(Weisberg & Huber 2007)。他にもCV1-2と考えられる特異な岩片も観察され、Kaidunですでに報告されているCV3岩片がさらに強い水質変成を受けたものである可能性がある(Tomeoka & Ohnishi 2011)。
結論:先行研究ではKaidunにおける炭素質岩片が、CI、CM、CRのそれぞれのグループの範囲に収まらず、場合によっては中間に位置するような酸素同位体的特性を持つことが報告されている(MacPherson+ 2009)。また、岩石・鉱物学的観察を加え、Kaidunの炭素質岩片は初期のΔ18O値に関わらず(前駆物質がCM様であっても)、CI-CRと同様の条件で変質したと結論づけている。このようにKaidun炭素質岩片には少なくともCI、CM、CRを包含する連続した物質が存在するという考えが支持されている。
本研究においてKaidun C1岩片の組織観察、及び鉱物化学組成分析を行った結果、半数以上の岩片はCIと関連していることが示唆された。一方で、CI類似岩片において、いくつかのdolomiteの分析からはCMとの関連性が見出された。この結果はKaidun炭素質岩片にCI-CMの中間的な物質が存在することを鉱物学的分析から示したと同時に、そのような特性がC1物質においても観察されることを見出した。
また、コンドリュール仮晶を含むC1岩片が観察され、CR1やCV1-2との関連が示された。これらの岩片は前駆物質がCR3やCV3であり、それらがCI-CRと同様の条件で、岩石学的タイプ1に分類されるほど強い水質変成を受けた可能性を示している。この観察結果からは、Kaidun C1岩相の更なる多様性の広がりを示すとともに、CI-CMを含む連続性がさらに拡張され、CRやCVをも含む可能性を示した。