2:30 PM - 2:45 PM
[R5-14] Antarctic micrometeorites containing pseudomorphs of melanophlogite: Dust from the sub-surface ocean of icy satellites or from an unknown type of trans-Neptunian objects?
Keywords:AMM, melanophlogite, sub-surface ocean, solar flare track
原始太陽系円盤ではシリカ鉱物は比較的まれな鉱物である。明らかな円盤内凝縮物は,Y-793261 CRコンドライトのアメーバ状オリビンアグリゲート(AOA)に含まれる石英である[1]。コンドライト,エコンドライト,南極微隕石(AMMs),惑星間塵(IDPs),81P/Wild 2彗星からスターダスト探査機が回収した試料にもシリカ鉱物は含まれるが,融液からの結晶化,あるいは,母天体の熱変成過程で形成されたものと考えられる[e.g. 2−6]。本研究では,AMMs中に,熱水環境で熱水溶液から形成されたと考えられるシリカ鉱物を見出したので報告する。
2つのAMM,D10IB324とD12IB086は,2010年と2012年にドームふじ基地近くから回収した表層雪より発見された。どちらも多孔質であり,SEM-EDSによるバルク定性分析から,コンドライト的組成に多く含まれる元素であるO, Mg, Si, Fe, Sの内で,Mg Kα線強度が明らかに低く,Si Kα線強度が高い。
D10IB324は,ほぼSiO2からFeに非常に乏しいサポナイトとの間に連続的な組成を持つ非晶質物質(サポナイトに近い組成の部分は約1.0 nmの格子縞を持つ層状珪酸塩に置換),正方形形状のSiO2(電子線回折は石英で指数付け可)を多量に含み,<50 nmの磁硫鉄鉱を多く含む物体(GEMS様物体とここではよぶ),>200 nmの磁硫鉄鉱,低Ca輝石も含む。D12IB086はより水質変成の程度が高く,非常に多孔質であるにもかかわらず,多量のフィラメント状の,ほぼSiO2からFeに非常に乏しいサポナイトとの間に連続的な組成を持つ非晶質物質(サポナイトに近い組成の部分は約1.0 nmの格子縞を持つ層状珪酸塩に置換), GEMS様物体,>200 nmの磁硫鉄鉱,低および高Ca輝石,正方形形状のSiO2(電子線回折は石英で指数付け可),分解して約10 nmサイズの酸化物集合体となっているMg-Fe炭酸塩分解物からなる。どちらにもかんらん石は含まれない。 これらのAMMsに含まれるSiO2結晶は例外なく立方体形状である。そのような(擬)立方体形状でも産するシリカ鉱物として,クラスラシルの一種であるメラノフロジャイト46SiO2·6(N2, CO2)·2(CH4, N2)がある [e.g. 7]。メラノフロジャイトの形成には,これら小さいガス分子の存在下で,ガスがテンプレートとして働くことが重要である[e.g. 8]。このことは,これらAMMsの前駆物質は,これらのガス分子の存在下でSiO2に富む熱水から結晶化したことを示唆する。現状ではガス分子が残留しているかは確認できていないが,引き続き分析を計画している。
このような環境を達成でき,惑星間空間に形成した物質を放出している既知の太陽系天体は,地下海から盛んに間欠泉を噴出している土星の衛星エンケラドスや,噴出物が地表に分布する木星の衛星のエウロパである。しかし,これらのAMMsの輝石とロダー石 (Na,K)2(Mg,Fe)5Si12O30には>5 x 1010 cm-2を越える太陽フレアトラックが含まれる。 [9]によると,そのようなIDPsやAMMsの母天体は太陽系外縁天体とされる。高トラック数密度は,太陽系外縁天体にも内部海を持ちかつて盛んな質量放出をした天体が存在したことを示唆するのか,ダストが木星や土星の重力圏から離脱して地球にまで到達するのに長期間かかったことを示すのか,今後更に検討が必要である。
References [1] Komatsu et al. 2018 PNAS 115, 7497–7502. [2] Rubin and Ma 2021. Meteorite Mineralogy. Cambridge Univ. Press. [3] Imae et al. 2013 GCA 100, 116-157. [4] Mikouchi et al. 2007 38th LPSC 1946 (abstract). [5] Matrajt et al. 2008 MaPS 43, 315–334. [6] Rietmeijer and McKay 1986 Meteoritics 743 (abstract). [7] Momma 2014 Phys. Condens. Matter 26, 103203. [8] D’Alessio et al. 2019 Microporous Mesoporous Mater. 286, 9-17. [9] Keller and Flynn 2022 Nat. Astronom. 6, 731-735.
2つのAMM,D10IB324とD12IB086は,2010年と2012年にドームふじ基地近くから回収した表層雪より発見された。どちらも多孔質であり,SEM-EDSによるバルク定性分析から,コンドライト的組成に多く含まれる元素であるO, Mg, Si, Fe, Sの内で,Mg Kα線強度が明らかに低く,Si Kα線強度が高い。
D10IB324は,ほぼSiO2からFeに非常に乏しいサポナイトとの間に連続的な組成を持つ非晶質物質(サポナイトに近い組成の部分は約1.0 nmの格子縞を持つ層状珪酸塩に置換),正方形形状のSiO2(電子線回折は石英で指数付け可)を多量に含み,<50 nmの磁硫鉄鉱を多く含む物体(GEMS様物体とここではよぶ),>200 nmの磁硫鉄鉱,低Ca輝石も含む。D12IB086はより水質変成の程度が高く,非常に多孔質であるにもかかわらず,多量のフィラメント状の,ほぼSiO2からFeに非常に乏しいサポナイトとの間に連続的な組成を持つ非晶質物質(サポナイトに近い組成の部分は約1.0 nmの格子縞を持つ層状珪酸塩に置換), GEMS様物体,>200 nmの磁硫鉄鉱,低および高Ca輝石,正方形形状のSiO2(電子線回折は石英で指数付け可),分解して約10 nmサイズの酸化物集合体となっているMg-Fe炭酸塩分解物からなる。どちらにもかんらん石は含まれない。 これらのAMMsに含まれるSiO2結晶は例外なく立方体形状である。そのような(擬)立方体形状でも産するシリカ鉱物として,クラスラシルの一種であるメラノフロジャイト46SiO2·6(N2, CO2)·2(CH4, N2)がある [e.g. 7]。メラノフロジャイトの形成には,これら小さいガス分子の存在下で,ガスがテンプレートとして働くことが重要である[e.g. 8]。このことは,これらAMMsの前駆物質は,これらのガス分子の存在下でSiO2に富む熱水から結晶化したことを示唆する。現状ではガス分子が残留しているかは確認できていないが,引き続き分析を計画している。
このような環境を達成でき,惑星間空間に形成した物質を放出している既知の太陽系天体は,地下海から盛んに間欠泉を噴出している土星の衛星エンケラドスや,噴出物が地表に分布する木星の衛星のエウロパである。しかし,これらのAMMsの輝石とロダー石 (Na,K)2(Mg,Fe)5Si12O30には>5 x 1010 cm-2を越える太陽フレアトラックが含まれる。 [9]によると,そのようなIDPsやAMMsの母天体は太陽系外縁天体とされる。高トラック数密度は,太陽系外縁天体にも内部海を持ちかつて盛んな質量放出をした天体が存在したことを示唆するのか,ダストが木星や土星の重力圏から離脱して地球にまで到達するのに長期間かかったことを示すのか,今後更に検討が必要である。
References [1] Komatsu et al. 2018 PNAS 115, 7497–7502. [2] Rubin and Ma 2021. Meteorite Mineralogy. Cambridge Univ. Press. [3] Imae et al. 2013 GCA 100, 116-157. [4] Mikouchi et al. 2007 38th LPSC 1946 (abstract). [5] Matrajt et al. 2008 MaPS 43, 315–334. [6] Rietmeijer and McKay 1986 Meteoritics 743 (abstract). [7] Momma 2014 Phys. Condens. Matter 26, 103203. [8] D’Alessio et al. 2019 Microporous Mesoporous Mater. 286, 9-17. [9] Keller and Flynn 2022 Nat. Astronom. 6, 731-735.