12:00 PM - 2:00 PM
[R6P-09] Cathodoluminescence pattern of quartz and quantitative determination of titanium and aluminum concentration within quartz crystals in the Tono plutonic complex, Kitakami mountains
Keywords:Quartz, cathodoluminescence pattern, titanium concentration, aluminum concentration, Tono plutonic complex
はじめに
珪長質マグマの地殻への貫入から定置,固化の間に生じる種々のマグマ溜りプロセスは,マグマ中で結晶化する初生鉱物の結晶成長の履歴として記録され得る.初生鉱物のうち,石英は珪長質岩に普遍的に含まれる鉱物であり,そのカソードルミネッセンス(CL)像観察やチタン(Ti)濃度定量によって石英の結晶成長プロセスを明らかにすることが可能となりつつある(例えば,Yuguchi et al., 2020).マグマ起源の石英のCL像は主にTi濃度と相関することが報告されているものの(Wark and Watson, 2006),石英中にはTiの他にも微量に含まれる元素が複数知られており(例えばアルミニウム(Al),リチウム),その含有量とCLとの関係や,結晶成長の様式との関連については明らかにされていない.そこで本研究では,石英の結晶化プロセス解明に資する情報として微量含有元素(Ti濃度,Al濃度)とCLパターンとの関係を明らかにすることを目的として,マグマ起源の石英についてCL像観察とTi濃度・Al濃度定量を実施した.また本研究は,電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて石英中のTi濃度の高精度定量を実施するとともに,Al濃度を同時に定量する技術の構築を目指すものである.
試料・手法
分析に用いた試料は,東北日本・北上山地の遠野複合深成岩体(遠野岩体)に産出する岩石試料4試料である.遠野岩体の中心部はアダカイト質岩からなり(Tsuchiya and Kanisawa, 1994),その周囲に分布するカルクアルカリ花崗岩との起源や貫入時期の相違について議論されている(Tsuchiya et al., 2007).本研究で用いた4試料はいずれも優白質な花崗閃緑岩~トーナル岩で,岩体の中心部付近から西側に向かって試料採取を行った(東から順に試料No.103,No.403,No.406,No.407).石英の結晶成長プロセスを議論するために,遠野岩体の4試料それぞれについて薄片を作製し,山形大学の走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-IT100A + Gatan mini CL)を用いて石英のCL像による結晶成長様式の観察を行った.その観察結果に基づいて,名古屋大学のEPMA(JEOL JCXA-733)によりTi濃度・Al濃度の定量分析を行った.
結果・議論
遠野岩体の石英の形状は他形から半自形で,一部,自形粒子も認められた.石英のCL像観察の結果,多くの自形・半自形粒子では,コア部が高輝度でリム部に向かって輝度が低くなるゾーニング(CLパターンA)が分布する.他形粒子では,粒子内の局所的な領域のみ高輝度なCL(CLパターンB)を有する傾向が認められた. 石英中のTi濃度とAl濃度を同一地点から同時に取得するために,EPMAでの測定手法を検討した.5台の分光結晶のうち,4台をTi,1台をAlの検出にそれぞれ使用し,測定時間200秒(ピークカウント100秒、バックグラウンドカウント100秒)を同一地点で8回繰り返してカウントを積算することで1点の定量値を得た.この手法では,Ti濃度の検出限界は約15 ppm,Al濃度の検出限界は約23 ppmとなった.また,測定中に電流値やAlのカウントを8回モニターすることで,測定中のノイズや他鉱物の混入等を評価することが可能となった. 遠野岩体の4試料に含まれる石英18粒子について,計87点でTi濃度及びAl濃度の定量分析を行った.80点以上の分析点においてAl濃度は検出限界以下であったことから,遠野岩体の石英ではCLの輝度とAl濃度に相関が無いと判断できる.Ti濃度は18点の分析点を除き検出限界以上の定量値を得た.CLパターンA,Bいずれの粒子でも,CLの輝度に対応して,高輝度な領域でTi濃度が比較的高い傾向が認められた.得られたTi濃度から,TitaniQ地質温度計(Wark and Watson, 2006)を用いて結晶化温度を導出した.SiO2活動度,TiO2活動度はいずれも1.0を仮定して温度を計算した.また,粒子内でCLの輝度が最も高い分析点をその粒子の結晶化温度を反映する分析点(本研究ではTiO2活動度1.0)と考え,1粒子につき1つの温度条件を導出した.試料No.407の最高温度条件は他の3試料に比べて石英の結晶化温度に誤差を超え,有意に高い傾向が認められる.石英の結晶化温度は,石英が晶出した際のマグマ溜り内の温度を反映すると考えられることから,得られた温度に基づいてマグマ溜り内の温度の不均質性を議論可能である.また,岩体の中央部付近で石英の結晶化温度が比較的低く,西側の試料で結晶化温度が高い傾向が認められることは,アダカイト質マグマとカルクアルカリ質マグマの貫入・定置から固化に至る過程の相違を示唆する.
珪長質マグマの地殻への貫入から定置,固化の間に生じる種々のマグマ溜りプロセスは,マグマ中で結晶化する初生鉱物の結晶成長の履歴として記録され得る.初生鉱物のうち,石英は珪長質岩に普遍的に含まれる鉱物であり,そのカソードルミネッセンス(CL)像観察やチタン(Ti)濃度定量によって石英の結晶成長プロセスを明らかにすることが可能となりつつある(例えば,Yuguchi et al., 2020).マグマ起源の石英のCL像は主にTi濃度と相関することが報告されているものの(Wark and Watson, 2006),石英中にはTiの他にも微量に含まれる元素が複数知られており(例えばアルミニウム(Al),リチウム),その含有量とCLとの関係や,結晶成長の様式との関連については明らかにされていない.そこで本研究では,石英の結晶化プロセス解明に資する情報として微量含有元素(Ti濃度,Al濃度)とCLパターンとの関係を明らかにすることを目的として,マグマ起源の石英についてCL像観察とTi濃度・Al濃度定量を実施した.また本研究は,電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて石英中のTi濃度の高精度定量を実施するとともに,Al濃度を同時に定量する技術の構築を目指すものである.
試料・手法
分析に用いた試料は,東北日本・北上山地の遠野複合深成岩体(遠野岩体)に産出する岩石試料4試料である.遠野岩体の中心部はアダカイト質岩からなり(Tsuchiya and Kanisawa, 1994),その周囲に分布するカルクアルカリ花崗岩との起源や貫入時期の相違について議論されている(Tsuchiya et al., 2007).本研究で用いた4試料はいずれも優白質な花崗閃緑岩~トーナル岩で,岩体の中心部付近から西側に向かって試料採取を行った(東から順に試料No.103,No.403,No.406,No.407).石英の結晶成長プロセスを議論するために,遠野岩体の4試料それぞれについて薄片を作製し,山形大学の走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-IT100A + Gatan mini CL)を用いて石英のCL像による結晶成長様式の観察を行った.その観察結果に基づいて,名古屋大学のEPMA(JEOL JCXA-733)によりTi濃度・Al濃度の定量分析を行った.
結果・議論
遠野岩体の石英の形状は他形から半自形で,一部,自形粒子も認められた.石英のCL像観察の結果,多くの自形・半自形粒子では,コア部が高輝度でリム部に向かって輝度が低くなるゾーニング(CLパターンA)が分布する.他形粒子では,粒子内の局所的な領域のみ高輝度なCL(CLパターンB)を有する傾向が認められた. 石英中のTi濃度とAl濃度を同一地点から同時に取得するために,EPMAでの測定手法を検討した.5台の分光結晶のうち,4台をTi,1台をAlの検出にそれぞれ使用し,測定時間200秒(ピークカウント100秒、バックグラウンドカウント100秒)を同一地点で8回繰り返してカウントを積算することで1点の定量値を得た.この手法では,Ti濃度の検出限界は約15 ppm,Al濃度の検出限界は約23 ppmとなった.また,測定中に電流値やAlのカウントを8回モニターすることで,測定中のノイズや他鉱物の混入等を評価することが可能となった. 遠野岩体の4試料に含まれる石英18粒子について,計87点でTi濃度及びAl濃度の定量分析を行った.80点以上の分析点においてAl濃度は検出限界以下であったことから,遠野岩体の石英ではCLの輝度とAl濃度に相関が無いと判断できる.Ti濃度は18点の分析点を除き検出限界以上の定量値を得た.CLパターンA,Bいずれの粒子でも,CLの輝度に対応して,高輝度な領域でTi濃度が比較的高い傾向が認められた.得られたTi濃度から,TitaniQ地質温度計(Wark and Watson, 2006)を用いて結晶化温度を導出した.SiO2活動度,TiO2活動度はいずれも1.0を仮定して温度を計算した.また,粒子内でCLの輝度が最も高い分析点をその粒子の結晶化温度を反映する分析点(本研究ではTiO2活動度1.0)と考え,1粒子につき1つの温度条件を導出した.試料No.407の最高温度条件は他の3試料に比べて石英の結晶化温度に誤差を超え,有意に高い傾向が認められる.石英の結晶化温度は,石英が晶出した際のマグマ溜り内の温度を反映すると考えられることから,得られた温度に基づいてマグマ溜り内の温度の不均質性を議論可能である.また,岩体の中央部付近で石英の結晶化温度が比較的低く,西側の試料で結晶化温度が高い傾向が認められることは,アダカイト質マグマとカルクアルカリ質マグマの貫入・定置から固化に至る過程の相違を示唆する.