一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

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R6:深成岩・火山岩及び サブダクションファクトリー

2023年9月16日(土) 12:00 〜 14:00 83G,H,J (杉本キャンパス)

12:00 〜 14:00

[R6P-10] 花崗岩中の石英のカソードルミネッセンスパターンとチタン濃度定量による石英の結晶化プロセスの解明

*加藤 あすか1、加藤 丈典2、小北 康弘1,3、湯口 貴史4、笹尾 英嗣3 (1. 山形大、2. 名古屋大、3. 原子力機構、4. 熊本大)

キーワード:石英、カソードルミネッセンス、EPMA、チタン濃度、TitaniQ地質温度計

本研究では珪長質の深成岩体に普遍的に産出する鉱物である石英を対象とし,石英の結晶化プロセスを解明することを目的とする.ここで,カソードルミネッセンス (CL) 像とは鉱物中の微量元素や格子欠陥を輝度の違いとして反映することが知られている (Drivenes et al.,2016).また, 石英のチタン (Ti) 濃度は石英の結晶化温度に依存することがWark and Watson (2006)で報告されている.このような特徴を持つCL像と石英のTi濃度を組み合わせ,石英の結晶化プロセスを解明する手法はYuguchi et al. (2020)で報告されている.石英の結晶化プロセスの解明において,Yuguchi et al. (2020)の手法と石英の形状や粒径などの記載岩石学的な情報と関連づけることは,石英の結晶化プロセスの解明,加えてマグマ溜まりの発達進化を検討する上で精緻な議論を可能にする.このことから本研究は,北上山地の久喜花崗岩体の石英を用いて,石英のCLパターンとTi濃度,鏡下観察による形状と産状の情報から花崗岩体の石英の結晶化プロセスの解明を行った.
研究手法として, 偏光顕微鏡による鏡下観察に基づき石英の粒径,形状,周辺鉱物の記載を行い,分析を行う石英の選定を行った.次に,選定した石英に対して山形大学の走査型電子顕微鏡 (JEOL JSM-IT100A + Gatan mini CL) を用いて,CL像を取得した.その後,名古屋大学の電子線マイクロアナライザ (EPMA: JEOL JCXA-733) を用いて石英中のチタン濃度を定量した.Ti濃度定量の分析条件は,加速電圧 15 kV,照射電流 60 nA,ビーム径 20 µm,計測時間 ピーク100秒,バックグラウンド (50+50)秒を8回の積算 (計1600秒 )という条件で行った.得られたTi濃度からTitaniQ地質温度計 (Wark and Watson, 2006) を適用し,石英の結晶化温度を導出した.
CL像解析の結果,CLパターンとして明暗の領域からなる層状構造を持つものをZoning-patternと分類した.また,輝度の明暗が不規則に分布するものはPatch-patternとし,輝度の明暗が均質に分布するものをHomogeneous-patternと分類した.Ti濃度定量の結果として,Ti濃度は122 ± 11~357 ± 11 ppmの定量値を得た. TiO 2 の活動度を1とし,Wark and Watson (2006)の地質温度計を用いて結晶化温度の計算を行うと772 ± 24~927 ± 20℃を示し,広い結晶化温度幅を有する. また,明暗の領域が層状構造をもつZoningの粒子においてCL像の明るい領域ではチタン濃度が高く,暗い領域ではチタン濃度が低い傾向を有する (図1).この傾向はCLパターンが異なっていても同じ傾向を示した.これは,CL像の輝度の変化が石英の結晶化成長に伴ってメルト中から結晶に取り込まれるTi濃度の変化を反映することを示す.また,広い結晶化温度幅を有することから,石英はマグマが固化する温度 (ソリダス) 付近から高温までの広い温度条件で結晶化することを示唆する.
R6P-10