12:00 〜 14:00
[R7P-03] 愛媛県八幡浜市に産出する含クロム石榴石脈
キーワード:含クロム石榴石、輝岩
1.はじめに
石榴石グループの中でも灰礬石榴石、灰鉄石榴石、灰クロム石榴石はウグランダイトと呼ばれ固溶体を形成する。その中でもCrを含有するものは比較的めずらしく、Crの供給源となるクロム鉄鉱とともにクロミタイト、蛇紋岩、輝岩、ロジン岩などに産する(小林, 1986)。多くは脈状や塊状であり、下部地殻や沈み込み帯における熱水変質により形成されるといわれている(Arai et al. 2020; Zhang et al. 2021)。本研究地である愛媛県八幡浜市において、クロム鉄鉱を伴わず鏡肌を有する特徴的な含クロム石榴石脈が確認されたため報告する。
2.地質背景・研究手法
調査地は愛媛県八幡浜市の沿岸部であり、三波川帯中の角閃岩や角閃石岩等から構成される川舞岩体(石本、1973)に位置する。野外調査を行い、採取した試料に対し粉末X線回折装置RIGAKU製Ultima Ⅳやエネルギー分散型X線分析装置を装着した走査型電子顕微鏡 JEOL製JSM-6510LVを用いて分析を行った。
3.結果と考察
含Cr石榴石脈を含む輝岩岩体は10×2 mほどで周囲の角閃石岩の片状構造に沿ってレンズ状の産状をとっていた。石榴石脈は角閃石岩との境界付近の輝岩中に分布していた。輝岩は粗粒な透輝石と少量の斜長石、そして粒間や脈に産するクリノクロア石、アクチノライトから構成される。試料採集の際に脈に沿って割れるため、石榴石脈のほとんどは輝岩試料の表面に平坦な脈として産する。灰クロム石榴石に似た濃い緑色を示し、厚さは10-100 μmで、試料表面側は直線的で鏡肌もみられ、輝岩側は湾曲し粗粒な粒子間に伸びた不明瞭な境界を有する。一部の試料では表面の脈に平行な脈が試料内部でも見られ、二本の脈の間は破砕帯が形成されていた。試料内部の脈は両側で湾曲した不明瞭な境界を示す。破砕帯は粗粒部と鉱物種が類似する一方で、アクチノライトの量が多いことや透輝石中のCr量が粗粒部よりも少ないという違いが見られた。分析した石榴石のほとんどが灰礬石榴石であり、Al、Fe、Crを同程度含有していた(Grs36-42, And28-44, Uv20-34)。
本産地の石榴石脈の形成には輝岩の変形過程が大きくかかわっていると考えられる。まず、輝岩が変形を受け破砕帯が形成される。その際、熱水によって破砕帯中の岩片の隙間や粗粒部の脈においてアクチノライトが形成される。その後、再び変形が起き破砕帯と粗粒部の境界にて石榴石脈や鏡肌が形成されるというモデルが想定される。石榴石脈や輝岩にはクロム鉄鉱が見られなかったため代わりのCr供給源を考える必要があるが、透輝石中の微量のCr (0.3-0.5 wt%)が関与しているのかもしれない。また、本産地の石榴石はAl、Fe、Crをほぼ同量含む中間的な組成をとるのも特徴的である。蛇紋岩中の石榴石は灰クロム石榴石と灰鉄石榴石の間の組成、輝岩中の石榴石は灰クロム石榴石と灰磐石榴石の間の組成をとることが多い(Kobayashi, 1986; Arai et al., 2020)。ロジン岩中のものでは灰鉄石榴石から中間的な組成がみられた(Zhang et al., 2021)。本産地の組成の傾向は透輝石のFe含有量が大きい(Mg# = 80-82)ことや周辺に分布している蛇紋岩の小岩体の影響が考えられる。
石榴石グループの中でも灰礬石榴石、灰鉄石榴石、灰クロム石榴石はウグランダイトと呼ばれ固溶体を形成する。その中でもCrを含有するものは比較的めずらしく、Crの供給源となるクロム鉄鉱とともにクロミタイト、蛇紋岩、輝岩、ロジン岩などに産する(小林, 1986)。多くは脈状や塊状であり、下部地殻や沈み込み帯における熱水変質により形成されるといわれている(Arai et al. 2020; Zhang et al. 2021)。本研究地である愛媛県八幡浜市において、クロム鉄鉱を伴わず鏡肌を有する特徴的な含クロム石榴石脈が確認されたため報告する。
2.地質背景・研究手法
調査地は愛媛県八幡浜市の沿岸部であり、三波川帯中の角閃岩や角閃石岩等から構成される川舞岩体(石本、1973)に位置する。野外調査を行い、採取した試料に対し粉末X線回折装置RIGAKU製Ultima Ⅳやエネルギー分散型X線分析装置を装着した走査型電子顕微鏡 JEOL製JSM-6510LVを用いて分析を行った。
3.結果と考察
含Cr石榴石脈を含む輝岩岩体は10×2 mほどで周囲の角閃石岩の片状構造に沿ってレンズ状の産状をとっていた。石榴石脈は角閃石岩との境界付近の輝岩中に分布していた。輝岩は粗粒な透輝石と少量の斜長石、そして粒間や脈に産するクリノクロア石、アクチノライトから構成される。試料採集の際に脈に沿って割れるため、石榴石脈のほとんどは輝岩試料の表面に平坦な脈として産する。灰クロム石榴石に似た濃い緑色を示し、厚さは10-100 μmで、試料表面側は直線的で鏡肌もみられ、輝岩側は湾曲し粗粒な粒子間に伸びた不明瞭な境界を有する。一部の試料では表面の脈に平行な脈が試料内部でも見られ、二本の脈の間は破砕帯が形成されていた。試料内部の脈は両側で湾曲した不明瞭な境界を示す。破砕帯は粗粒部と鉱物種が類似する一方で、アクチノライトの量が多いことや透輝石中のCr量が粗粒部よりも少ないという違いが見られた。分析した石榴石のほとんどが灰礬石榴石であり、Al、Fe、Crを同程度含有していた(Grs36-42, And28-44, Uv20-34)。
本産地の石榴石脈の形成には輝岩の変形過程が大きくかかわっていると考えられる。まず、輝岩が変形を受け破砕帯が形成される。その際、熱水によって破砕帯中の岩片の隙間や粗粒部の脈においてアクチノライトが形成される。その後、再び変形が起き破砕帯と粗粒部の境界にて石榴石脈や鏡肌が形成されるというモデルが想定される。石榴石脈や輝岩にはクロム鉄鉱が見られなかったため代わりのCr供給源を考える必要があるが、透輝石中の微量のCr (0.3-0.5 wt%)が関与しているのかもしれない。また、本産地の石榴石はAl、Fe、Crをほぼ同量含む中間的な組成をとるのも特徴的である。蛇紋岩中の石榴石は灰クロム石榴石と灰鉄石榴石の間の組成、輝岩中の石榴石は灰クロム石榴石と灰磐石榴石の間の組成をとることが多い(Kobayashi, 1986; Arai et al., 2020)。ロジン岩中のものでは灰鉄石榴石から中間的な組成がみられた(Zhang et al., 2021)。本産地の組成の傾向は透輝石のFe含有量が大きい(Mg# = 80-82)ことや周辺に分布している蛇紋岩の小岩体の影響が考えられる。