2023 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

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Poster presentation

R7: Petrology, Mineralogy and Economic geology (Joint Session with Society of Resource Geology)

Fri. Sep 15, 2023 12:00 PM - 2:00 PM 83G,H,J (Sugimoto Campus)

12:00 PM - 2:00 PM

[R7P-07] Formation process of chalcedony at subaqueous volcanism 2 Oga region, Japan

*Natsuko Sano1, Tsuyoshi Miyamoto2, Takahiro Kuribayashi1, Toshiro Nagase3 (1. Tohoku Univ. Sci., 2. Tohoku Univ. CNEAS, 3. Tohoku Univ. Museum)

Keywords:Chalcedony, Subaqueous volcanism, Hyaloclastite, Celadonite

【はじめに】
 玉髄に関する多くの研究は組織を鉱物学的に解析した研究であり地質過程には焦点を当てておらず,玉髄を形成した溶液の起源について触れていないか,触れていたとしても地下から上昇した溶液を想定している場合が多い(例えば,清水・⻘木,2001).この場合,玉髄を形成した溶液は海水を起源とする溶液が地下を循環し上昇してきたと考えられている (宮地ほか,2003;⻘木ほか,2017).佐野(2022, 卒論)は宮城県奥松島地域に産する玉髄について調査した.調査の結果,奥松島では海水が火砕流堆積物で熱せられることで生じる溶液から玉髄が形成したとすることも可能であるとしたが,実際には地下から上昇した溶液でも説明可能であり,玉髄を形成したシリカ成分の起源を特定できなかった.その原因は,溶液の流入時期を特定できず,火山噴火に伴って形成されたかどうかを確定できなかったことが原因であると考えられる.そこで本研究では,玉髄を形成した溶液の起源,特にシリカ成分の起源を明らかにすることを目的とする.
【手法】
 玉髄を形成した溶液の流入が海底火山噴火に伴っていると考えられる秋田県男鹿地域を調査地域に選んだ.地質過程を明らかにするために地質調査を行い,試料を採取した.採取した試料は偏光顕微鏡による薄片観察,EPMA分析,蛍光X線分析(XRF),粉末X線回折(XRD),ラマン分光分析をし,鉱物同定や全岩化学組成を決定した.
【結果】
 調査露頭は,男鹿半島加茂青砂地域の南東~北西方向に約100 mの海岸線に露出する流紋岩質溶岩からなる.南東から北西に向かって赤褐色を示す結晶質な流紋岩と黒色の黒曜岩が分布する.流紋岩と黒曜岩は石基の結晶化度に違いがあるが斑晶鉱物組み合わせや全岩化学組成は同じである.黒曜岩は南東から北西に向かって塊状からブロック状に変化し,ブロック状の産状を示す部分にはブロック同士の境界に細粒な基質が存在する.流紋岩と黒曜岩の両方にクラックが存在するが,玉髄は黒曜岩のクラックにのみ脈状に分布し,流紋岩中のクラックには存在しない.また,黒曜岩のクラックにはセラドン石を含む緑色の岩脈もあり,セラドン石を含む岩脈と玉髄脈の分布は概ね一致する.露頭上では両者の形成の前後関係は特定できないが,明瞭な境界を持つ.
 薄片観察の結果から,黒曜岩は斑晶として斜長石と黒雲母を含み,石基は真珠状組織を示す.セラドン石を含む岩脈では二つの岩相が観察される.一つは黒曜岩と同様の真珠状組織のクラックに細粒なセラドン石が充填した組織である.もう一方は黒曜岩のガラスが存在するものの,ガラスの多くが細粒な斜プチロル沸石や顕微鏡下では同定できない極細粒な結晶に置き換わり真珠状組織が認められない組織であり,結晶の間を細粒なセラドン石が埋める.また,白色を示す岩脈もあり,セラドン石を含む岩脈のうち細粒な斜プチロル沸石が組織の大部分を占めるものと類似した組織を示すが,セラドン石が存在しない.玉髄脈とセラドン石を含む岩脈との境界には細粒な斜プチロル沸石が存在する.
 XRDの結果では,黒曜岩では明瞭なピークが認められないのに対し,セラドン石を含む岩脈には斜プチロル沸石に加え、顕微鏡下では同定できない石英のピークが認められる.XRFの結果では,セラドン石を含む岩脈のうち細粒な斜プチロル沸石が組織の大部分を占めるものは,黒曜岩や真珠状組織を示すセラドン石を含む岩脈に比べてSiO2の量が約3 %多く,SrやK2Oといった海水に含まれる元素も多く含まれる.
【考察】
 調査露頭に存在する流紋岩と黒曜岩は石基の結晶化度に違いがあるが斑晶鉱物組み合わせや全岩化学組成が同じであることから,ここの流紋岩と黒曜岩は一連の溶岩であると考えられる.黒曜岩は露頭上で南東から北西に向かって塊状からブロック状に変化し,ブロック状の産状を示す部分にはブロック同士の境界に細粒な基質が存在することからハイアロクラスタイトの構造であるとみられる.黒曜岩は海水で急冷された溶岩表面部分にあたり,結晶質な流紋岩はゆっくりと冷却された溶岩内部に相当すると考えられる.玉髄やセラドン石を含む岩脈が溶岩内部に認められないことは,玉髄やセラドン石を含む岩脈が形成された際に,溶岩内部がクラックを生じていない状態であったことを示唆する.つまり玉髄やセラドン石を含む岩脈の形成時期は水中に噴出した溶岩の内部が固結するまでの短期間に制約される.玉髄やセラドン石を含む岩脈は火山噴火に伴ってできたと考えられ,玉髄を形成した溶液はハイアロクラスタイトに取り込まれた海水が熱せられて生じた可能性がある.海水が溶液の起源であるとした場合,溶液が関与してできたセラドン石を含む岩脈に,海水中に多く含まれるSrやK2Oが多いことも整合的である.
R7P-07