一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

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R7:岩石・鉱物・鉱床 (資源地質学会 との共催 セッション)

2023年9月15日(金) 12:00 〜 14:00 83G,H,J (杉本キャンパス)

12:00 〜 14:00

[R7P-08] 福徳岡ノ場の2021年噴火由来軽石に見られるクリストバライトを含む長石集合体岩片

*吉田 健太1、沢田 輝2、丸谷 由3、松田 渉3 (1. 海洋研究開発機構、2. 富山大学、3. ネコのわくわく自然教室)

キーワード:福徳岡ノ場、クリストバライト、漂着軽石

小笠原弧の海底火山「福徳岡ノ場」で2021年8月に起きた爆発的な噴火では,多量の軽石が放出されるとともに,大規模な軽石漂流現象が起き,2021年10月の奄美・沖縄地域への漂着を皮切りに,日本列島各地の海岸およびフィリピンや台湾,タイへと軽石の漂着が見られた[1,2].漂着した軽石はSiO2=62%,Na2O+K2O=8-10%程度で一様な粗面岩組成をしていたが,その色や組織は明るい灰色のものから黒色のものまで多様であった [1].黒色の軽石には高Mgカンラン石(Fo~90%)等の初生的な苦鉄質マグマに由来する成分が見られるとともに,磁鉄鉱や黒雲母のナノ結晶が観察され,福徳岡ノ場の粗面岩マグマだまりに苦鉄質のマグマが一部貫入し,水の供給とマグマの酸化を引き起こすことでナノ結晶の晶出とその後の噴火を引き起こしたモデルが提案されている[1,3].
福徳岡ノ場からの漂着軽石の中には,稀に異質な岩片を取り込んでいるものがある.これまでに苦鉄質岩の特徴を持つもの(高Mgカンラン石やディオプサイドを含む)が[1]で記載がされており,福徳岡ノ場のマグマ供給系と噴火活動に初生的な苦鉄質マグマが関与したことを強く示す証拠となった.本研究では福徳岡ノ場噴火由来の軽石から,新たにアルカリ長石を主成分とする特異な岩片を発見したので,その産状を報告する.
岩片は,茶色と黒色の軽石の複合岩塊の中に,黒色軽石部分に包含される形で産し,大きさは1cm程度で角ばっており,やや暗い灰色をしている.斑晶鉱物として最大で2mmに達する斜長石(An30程度)を含み,石基は細粒のアルカリ長石から成る.石基のアルカリ長石は空隙や細粒な斜長石の周辺でKに乏しくNa, Caに富む傾向が見られるが,比較的大きな(2mm)斜長石の周辺ではこの特徴は見られない.岩片断面の1辺にNaに乏しい外殻が見られ,その殻に向けて石基Mgの減少が見られる非対称な不均質性が見られる.
不透明鉱物として鉄硫化物を含み,細粒のルチルおよびアナテースから成るチタン鉱物濃集部も観察された.石基には,多くの場合空隙を伴う形で,クリストバライトの結晶が最大0.1mm程度の大きさで見られる.このクリストバライトは,カソードルミネッセンス観察では放射状の組織が見られるとともに,化学組成として0.4%程度のAl2O3と0.2%程度のNa2Oを含む.福徳岡ノ場では,近海のドレッジで得られた軽石試料からも,ガラス質石基の空隙中に晶出するクリストバライトが報告されており,噴火活動が収まっている活動静穏期に火道内で火山ガスとガラスが反応した結果生成したものだと考えられている[4].本試料のクリストバライトはガラスではなく結晶化した石基鉱物に伴われている点で産状が異なる.
アルカリ長石の化学組成は,空隙周辺でのCa量増加トレンドがCa-Na-Kの三成分図上で850℃程度のソルバスと準平行に並び,これは福徳岡ノ場のマグマだまりで推定される温度(約930℃)[1] よりやや低い.
以上の観察から,この岩片は噴火に際して破砕した岩石の一部が,噴出するマグマに取り込まれたものであると考えられる.岩片は元々火道を閉塞する岩石の一部で,比較的深部の850℃程度の高温下で,火道閉塞物が火山ガスと反応することで,斜長石の分解とクリストバライトの晶出が起きた可能性が高い.
[1] https://doi.org/10.1111/iar.12441
[2] https://doi.org/10.2343/geochemj.GJ22011
[3] https://doi.org/10.1038/s41598-023-34301-w
[4] https://doi.org/10.31223/X5P06W
R7P-08