2023 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

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Poster presentation

R7: Petrology, Mineralogy and Economic geology (Joint Session with Society of Resource Geology)

Fri. Sep 15, 2023 12:00 PM - 2:00 PM 83G,H,J (Sugimoto Campus)

12:00 PM - 2:00 PM

[R7P-10] Heterogeneity of the uppermost mantle below the Central Graben, Northern Mariana Trough - ReMicrostructural analysis of peridotites from KR02-01 cruse

*Yumiko HARIGANE1, Akihiro Hasebe Tamura2, Ryoko Senda3, Tomoaki Morishita2, Hiroyuki Yamashita4 (1. Geological Survey of Japan, AIST, 2. Kanazawa University, 3. Kyusyu University, 4. Kanawaga Prefectural Museum of Natural History)

Keywords:Peridotite, Backarc basin, Mariana Trough, Mantle heterogeneity, Central Graben

背弧海盆や中央海嶺などの海底拡大系において、マントルや海洋地殻物質がどのような特徴を持つのか、どのような過程を経て形成するか、それらの物質がどのように分布するのかは、水平方向・垂直方向・時間スケールで未だに不明な点が多い。近年では北極海や南西インド洋の超低速拡大系でマントル物質の不均質性(Liu et al., 2008; Seyler et al., 2003など)が報告されている。
マリアナトラフにおいても、南北で地殻物質の厚さが変化していることから、メルト供給に影響するマントル物質の不均質性の可能性が指摘されている(Kitada et al., 2006)。マリアナトラフはマリアナ海溝の西側に発達した現在も活動中の背弧海盆であり、トラフ軸の南北で地球物理学的特徴やマグマの組成が異なっている(Martinez et al., 1995など)。北部マリアナトラフ、北緯19度40分-21度周辺は、2つの非常に深い地溝がありCentral Grabenと呼ばれる(Yamazaki et al., 2003)。ここは非常に高いマントルブーゲー異常値をもつこと、マントル物質が多く露出することから、マグマに枯渇した領域であり、非マグマ性の拡大が生じたと考えられている(Martinez et al., 1995; Ohara et al., 2002; Yamazaki et al., 2003)。
本研究では背弧の拡大軸下のマントル不均質性について議論するために、2002年1月にJAMSTEC深海調査研究船「かいれい」による調査航海KR02-01にて採取されたかんらん岩類の微細構造解析を行った。タイトルに(再)とつけたのは、Ohara et al. (2002)(1991_Tunes 7航海とYK96-13_leg2航海)と千葉ほか(2007, 2008)、千葉・新井田(2009)(KR02-01航海)で、ある程度の岩石学的検討が行われたためである。本研究はこれらを考慮しつつ、マントル物質の不均質性に着目して、新たに分析・解析を行った。KR02-01航海では、Central Graben Southのドレッジにより,かんらん岩類、はんれい岩類、トーナル岩類、および角閃岩が採取されている(有馬・増田, 2005)。本研究ではCentral Graben Southにおける東側斜面2地点のドレッジにより採取されたかんらん岩試料(35個)について、微細構造、主要・微量化学組成と同位体組成の分析・解析を行った。
微細構造:かんらん岩試料はほとんどが蛇紋岩化作用を受けており、かんらん石は蛇紋石となっていた。かんらん岩はハルツバーガイトとダナイトからなる。肉眼観察と偏光顕微鏡観察から、かんらん岩の微細構造を4つに分類した:(a)丸みを帯びた粗粒〜中粒な輝石を持つプロトグラニュラー組織。(b)輝石のポーフィロクラストと細粒基質部で構成されたポーフィロクラスト状組織。(c)スピネルの伸長構造をもつマイロナイト様組織。(d)細粒化したスピネルをもつ細粒化組織。ハルツバーガイトは(a-b)の特徴、ダナイトは(c-d)の特徴をそれぞれ持つ。またこれらは優白質岩脈、角閃石や輝石に富んだ岩脈、はんれい岩脈の貫入を受けている。細粒化組織を持つダナイトに関しては、スピネルの周囲に変質した斜長石が観察された。産総研のSEM-EBSDを用いてかんらん岩試料の結晶方位の測定を試みた。ただし蛇紋岩化作用に加え、粗粒の輝石が多いことから集中度の判定に使えるデータが少なく,結晶方位パターンが特定できなかった。
主要・微量化学組成:かんらん岩を構成する鉱物の主要および微量元素化学組成を産総研のEPMAと金沢大学のLA-ICP-MSを用いて分析した。スピネルの主要元素組成はCr#が0.29から0.55を示し、先行研究結果よりも幅広いCr#を示した。単斜輝石と直方輝石の微量元素組成は軽希土類元素に乏しい左下がりのパターンを示すが、角閃石や輝石に富んだ岩脈、はんれい岩脈が貫入したかんらん岩は軽希土類元素に富むパターンを示した。
同位体組成:Os(オスミウム)同位体比はJAMSTECのTIMS(TRITON:ThermoFisher Scientific)により、白金族元素(PGEs)組成は九州大学のAgilent4500で分析した。ほとんどのかんらん岩試料において、PGEsパターンは全体的にフラットであること、またOs同位体比は典型的なマントルの値を示した。
講演ではこれらの詳細な観察・分析の結果を説明するとともに、後に貫入してきた岩脈によるかんらん岩の改変やダナイトーハルツバーガイトの成因などについて議論し、マリアナトラフにおけるマントル物質の不均質性について評価する。