第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-41] ケラチノサイトのフェノタイプ制御に関するエンハンサーの探索

〇武田 佳奈1,2、武石 幸容2、長岡 良礼2、岡村 和彦3、八田 光世2 (1. 福歯大 矯正、2. 福歯大 分子機能、3. 福歯大 病態構造)

キーワード:ケラチノサイト、フェノタイプ制御、エンハンサー

【研究背景および目的】 ケラチノサイトは特有の細胞骨格と接着装置を持ち、環境バリアとなる重層扁平上皮を構築する上皮系細胞である。創傷治癒の過程では間葉系様のフェノタイプ変化を起こすことが報告されており、この現象をEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT;上皮-間葉転換)という。しかしながら、ケラチノサイトのフェノタイプ制御には不明な点が多い。本研究ではケラチノサイトのフェノタイプがどのように制御されるかという分子機構を明らかにするため、不死化ケラチノサイト株HaCaTを用いてフェノタイプ特異的な遺伝子発現パターン構築に関与するエンハンサーの検索を行った。 【結果と考察】 抗ヒストンH3リジン27アセチル化抗体を用いたChIP-seqを行い、363のSuper enhancer(SE)を同定した。さらにSEがE-cadherin(CDH1)やkeratin(KRT14)などのケラチノサイトの上皮系マーカー遺伝子領域に存在することを確認した。GREATによるエンリッチメント解析ではanchoring junction、adherens junction、cell-substrate adherens junctionなどのGOtermが抽出された。次に、PROTACを用いてSE結合因子であるBRD4をノックダウンし、その影響を調べた。BRD4ノックダウン細胞はEMT誘導と似た紡錘状の形態変化を示したが、TGF-β₁による間葉系マーカーfibronectin(FN1)の発現誘導が起こらないことが分かった。 これらの結果から、ケラチノサイトのフェノタイプ特異的な遺伝子発現パターン構築においてSEおよびBRD4が重要な役割を担っていると考えられた。