国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

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2024年11月9日(土) 09:00 〜 13:00 メディアラウンジ (外濠校舎1階)(JAHSS) (外濠校舎1階 メディアラウンジ )

09:00 〜 13:00

[1Z127] 国際気候変動ガバナンスにおける中国の行動変容ーー気候安全保障への認識変遷の視点から

*温 馨1 (1. 神戸大学法学研究科)

キーワード:気候変動ガバナンス、気候安全保障、グローバル・ガバナンス

世界第2位の経済大国、そして世界第1位の温室効果ガス排出大国となった中国は、国際気候変動ガバナンスにおける行動が次第に積極化へと転換してきた。先行研究では、中国の行動の積極化を国益追求の視点から分析するのが一般的である。一方、中国の国益追求に対してどのように変遷していたのか、について体系的、ダイナミック的に考察する研究が多くない。また、近年、中国政府は気候変動問題を広い意味での安全保障の問題と認識し、国際社会において気候変動問題を「気候安全保障」として取り上げる姿勢を示している。そこで、本稿は、「気候変動安全保障への認識の変容は、国際気候変動ガバナンスにおける中国の行動変容に、どのようなインパクトを与えたのか」という研究の問いを立て、中国の気候安全保障への認識に焦点を当たて実証研究を行った。
本稿は、21世紀に入ってからの国際・国内レベルにおける中国の国際気候変動ガバナンスへの関与に対し過程追跡による因果的推論を行った。使用した資料は、国際気候変動ガバナンスへの中国の関与に関する先行研究と、中国の政治的文書や国家指導者及び交渉関係者の発言記録、実際の気候変動をめぐる国際交渉の資料などで収集した情報である。
研究の結論として、中国の行動変容をもたらす要因である気候安全保障への認識は、「軽視期」、「形成期」、「転換期」といった3つの段階を経って変容してきた。「軽視期」には、中国は国内の貧困からの脱却のため、国内の経済開発の国益を優先させて環境保護を含めた気候安全保障を軽視していた。環境保護の犠牲を代価した急速な経済成長を果たした中国は、国内において深刻化した環境汚染問題や国際社会からもGHGs排出抑制・削減に関する国際的責任を受け入れようという国際的な圧力に直面するようになった。とともに、中国政府は国内の経済の持続可能な成長を確保するためにも、国際社会からの圧力を緩和するためにも、国内におけるに気候変動問題への対処を重視し強化して気候変動問題を含めた非伝統的な安全保障への認識も形成してきた。2015年後、中国の国内経済の鈍化や国際影響力を巡って米中2大国間の競争が顕在化している中、より良い国際的イメージとリーダーシップを獲得するために、中国は更に気候安全保障への認識を強化し、気候変動問題に対し地球規模での対処へ目を向けて転換するようになった。気候変動対策を巡って国連枠組み内と中国主導の枠組みにおける南南協力のための国際支援を行い、資金面・技術面における多くの物質的な公共財を提供している。

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