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[O-2-3] 弓部大動脈瘤に対するTotal Debranching TEVARの有用性の検証
キーワード:total debranching TEVAR, distal arch aneurysm
【背景】従来手術法では左開胸併用を要する広範囲弓部大動脈瘤や,弓部以遠のエントリーやULPをTEVARでカバーしたい解離性動脈瘤を中心に,当院ではTotal Debranching TEVAR(以下TDT)を施行している。TDTは左開胸なしに,症例によってはoff-pumpでも施行可能であり低侵襲と考えている。【対象と方法】2012年6月-2014年6月に弓部大動脈瘤21例中,TDTを施行したのは9例。真性瘤5例,解離性4例(亜急性2例,慢性2例)であった。年齢74±6歳,瘤径60±13mm,再手術症例は2例(CABG後1例,部分弓部置換後1例),人工心肺使用5例,併施術式はCABG3例,AVR1例,上行置換4例であった。当院では両側腋窩動脈を露出し,胸骨正中切開後にリング付人工血管で腋窩バイパスを作成。上行大動脈を部分遮断し,頸部バイパス(Hemashield trifurcated)を側々吻合。単純遮断下に腕頭,左総頸動脈と頚部バイパスを端々吻合。左鎖骨下動脈根部を結紮。人工血管から順行性TEVARを施行。最近ではon-pump症例は腕頭動脈を灌流して腋窩バイパス作成なしに左腋窩動脈へ頚部バイパスを端側吻合し,上行径4cm以上の場合は上行置換を行っている。【結果】手技完遂は100%。挿管は1.5±1.0日で術後発生した呼吸器合併症・嚥下障害はなかった。エンドリークはtype2のみ2例認めたが経過観察中に消失した。合併症は上行大動脈解離1例(術後CTで判明,上行置換施行),腋窩バイパス感染1例(腋窩バイパス抜去,大腿-腋窩バイパス施行)。脳合併症は認めず全例独歩にて軽快退院。【結語】TDTは左開胸なしに,症例によってはoff-pumpでも施行可能であり,脳合併症や追加治療が必要なエンドリークも認めず,安全で根治性の高い術式であると考えられた。