第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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特別企画

特別企画
日本看護協会等が実施の調査報告

Fri. Sep 2, 2022 12:15 PM - 1:30 PM 口演会場1 (小ホール)

登壇者:田上 京子・南平 直宏・鈴木 理恵・ 中村 奈央/堀川 尚子・高田 昌代

[SK1-4] 訪問看護の提供体制強化に向けた取り組みと課題

中村 奈央, 堀川 尚子 (日本看護協会医療政策部在宅看護課)

【目的】
 急増する在宅医療・訪問看護のニーズに対応するためには訪問看護師数は未だ不足しており、人材確保が急務である。また、地域によって抱えている課題は様々であり、各自治体がそれぞれの課題を踏まえて具体的な目標値を定め施策を充実させることが必要となる。そこで本調査では自治体及び関係団体を対象とし、訪問看護に関する計画策定や整備等の状況・課題について明らかにすることを目的とした。
【方法】
 全都道府県・市区町村及び都道府県看護協会を調査対象として Web 調査によりアンケートを実施し、訪問看護の今後の充足の見通し、サービス整備の現状、自治体計画における目標設定状況、支援事業の実施状況、関係団体との連携等について調査した。また、4 都道府県と同都道府県内の4 市町村に対し、サービス提供や自治体施策の状況、課題等についてヒアリング調査を実施した。
【結果】
 訪問看護のニーズの現状と将来推計については、都道府県では今後も訪問看護サービスの利用の増加を見込んでいる一方、市区町村では 2020 年度よりも減少を見込む自治体から大幅増を見込む自治体まで様々であった。訪問看護サービス量については、「現在十分確保できており、 2025 年にも十分確保できる見込み」の回答が最も多かったが、都道府県では「無回答・不明」の割合も比較的高く、判断を迷っている様子も見受けられた。介護保険事業(支援)計画等での訪問看護の整備目標については、計画上に明記されている自治体は少なかった。訪問看護に係る施策については、都道府県看護協会への調査より、都道府県単位では人材確保や資質向上支援などの事業が幅広く実施されていたが、市区町村への調査では「特に実施していない」が6 割程度に上った。
【考察】
 自治体の訪問看護サービス量推計は国の需給見通しの推計(2025 年に最大約 12 万人必要)と乖離があり、その背景には病床再編や在宅医療者増加等の影響が勘案されていないことが考えられるため、都道府県の医療・介護部局の連携や、訪問看護従事者数に関する定量的な目標値の設定を推進し、自治体における計画的なサービス整備につなげる必要がある。また、訪問看護従事者の資質向上支援等に加え、今後は管理者のマネジメント力の向上や事業所の業務効率化への支援など、サービスの質担保に向けた事業推進や訪問看護総合支援センターの設置等、多面的な支援策の実施が求められる。