石油学会 大阪大会(第53回石油・石油化学討論会)

特別講演・招待講演概要

 
特別講演
(1日目,8F・大ホール,16:45~17:45
「国際水素サプライチェーン構築への取組み」                         
  川崎重工業(株)水素戦略本部プロジェクト総括部
パイロット推進部長   吉山 孝
国がエネルギー基本計画にも掲げて推進している海外からのCO2フリー水素サプライチェーンの概念、世界初の液化水素運搬船によるパイロット実証、および水素を燃料とした水素ガスタービンについて紹介する。
 
セッション招待講演
【カーボンニュートラル sess.】 1日目・G会場
カーボンニュートラル社会実現に向けた次世代燃料のあり方について」(13:10~13:30)
経済産業省資源エネルギー庁  信末 直人
2050年カーボンニュートラルの実現は,並大抵の努力では実現できず,化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する「グリーントランスフォーメーション」を強力に進めていくことが重要となる。このような中,カーボンニュートラルの実現に向けた一つの手段として,バイオ燃料や合成燃料(e-fuel)着目されている。今回は,これら液体燃料を中心に,足下の取組状況や今後の政策の方向性について述べる。

アンモニア直接燃焼」(14:00~14:30
               東北大学  小林秀昭
気候変動問題への対策としてエネルギー分野の脱炭素化は急務である。カーボンフリー燃料であり、海外からの大量輸送において貯蔵・輸送コストが低いアンモニアの有用性が認識され、製造から輸送、利用までのバリューチェーン構築が急がれている。特に利用技術では、アンモニアを水素に分解することなく燃料として利用する直接燃焼の技術開発が進められている。本講演では、アンモニア直接燃焼の技術と燃焼科学的背景を説明する。
 
CO2と再エネ水素で製造する合成燃料“e-fuel”」(14:40~15:10
               成蹊大学  里川重夫
カーボンニュートラルを達成するためには、化学品や燃料を製造する際に、化石資源を使用しないで製造する必要がある。バイオマス資源を利用したバイオ燃料のみでは不足することから、大気中のCO2と再エネ由来の水素から製造する合成燃料”e-fuel”の開発が期待されている。本講演ではメタノール合成経由とFischer-Tropsch合成経由の概要と最近の研究開発動向を述べる。
 
「プラスチック資源戦略からみるカーボンニュートラルに向けた石油産業への期待」(15:10~15:40)
               東北大学  吉岡敏明
プラスチックリサイクルとバイオマスプラスチック導入など、循環資源や原料資源の確保がカーボンニュートラルの象徴的な位置付けになっている。本講演では、プラスチックの資源循環戦略にある「3R+Renewable」に対して、石油産業を支える多様な技術プロセスが果たす役割についての可能性と期待についていくつかの研究事例とともに紹介する。
 
「カーボンニュートラルに対する石油学会の活動の方向性」(15:40~16:00)
             (公社)石油学会 会長,東北大学  村松淳司
カーボンニュートラルについて、公益社団法人石油学会として、どのようなスタンス、そして、どのような方向性で、考えていくのかを、会長の意見を聴いて頂く機会とする。石油を大切に使うこと、しかも、それは石油にしか、その源を求めることができないもの、たとえば、プラスチックや化学繊維など、を念頭に、カーボンニュートラルの実現に向けて、科学技術を磨いていくことだと考えていま。

【資源開発 sess.】 1日目・C会場
「石油天然ガス開発とカーボンニュートラル(仮題)」(13:00~13:45)
               京都大学  村田澄彦
2018年のIPCC特別報告の発表以後,2050年までにカーボンニュートラルを達成することが全世界的な目標となり,石油天然ガス開発事業に対する社会の風当りが強くなっている。しかし,エネルギー資源,石油化学工業の原材料資源としての石油天然ガスの役割は依然大きく,社会はジレンマをかかえている。本講演では,CCS/CCUSを含めこのジレンマを解消するために必要な石油天然ガス開発事業について考える。
 
【設備保全sess.1日目・F会場
「赤外線を用いた広域ガス検知システムの開発と高度化」(13:00~13:30)
              神戸大学  阪上隆英,コニカミノルタ(株)  都築斉一
本講演では、赤外線を用いた広域漏洩ガス検知システムの開発と高度化について、2018年度から2022年度の5年間にわたり実施したNEDO事業の成果報告を中心に紹介する。
 
【製油所の脱炭素化sess.2日目・B会場
「冷熱を活用する新しい大気中二酸化炭素回収技術の研究開発」
(9:00~9:30)
            名古屋大学  則永行庸
2050年カーボンニュートラルの達成には、大気中からの二酸化炭素回収(DAC)によるオフセットが必須とされ、そのDACによる回収量は約10億トンとするシナリオもある。本講演では、現在、演者らが取り組んでいるLNGの冷熱を利用した新しいコンセプトでのDAC技術の開発の状況を紹介する。

【石油精製・石油化学における水銀等の微量化合物の除去】2日目・E会場
「水銀の環境でのうごき―フィールドワークから見えてくること―」
(9:30~10:00)
             富山県立大学 中澤  暦
水銀は自然由来、人為由来の放出源から陸域、海域、大気等の環境媒体に放出される。大気中水銀放出発生源としては、火山、バイオマス燃焼、化石燃料燃焼、人力小規模金採掘 (Artisanal Small-scal)の水銀は自然由来、人為由来の放出源から陸域、海域、大気等の環境媒体に放出される。本講演では演者が日本国内、インドネシア、南極などに調査に出かけて得た研究結果を紹介する。

【ポリマー・オリゴマー】2日目・C会場
「バイオプラスチックの新潮流」(13:00~13:45)
大阪大学  宇山  浩
海洋プラスチックごみが社会問題化したことを契機に生分解性プラスチックへの関心が高まっている。また、地球温暖化防止、循環型社会構築に貢献するバイオマスプラスチックの普及も社会的に重要視されている。本講演では生分解性プラスチックを中心に、最近のバイオプラスチックの開発動向を概説する。

「分子設計による新しい分解性高分子の創製」(14:00~14:45)
                                  奈良先端科学技術大学院大学  網代広治
機能性高分子材料は多岐にわたっている。持続可能な社会のためにこれらを分解性高分子に置き換えるには新規高分子の設計が必要と言える。本講演では、演者がこれまでに報告してきた、高分子末端に機能性置換基を導入したポリ乳酸ステレオコンプレックスの合成や、トリメチレンカーボネートの側鎖に種々の機能性置換基を導入した新規モノマーの調製およびそれらを用いた様々な新しい分解性高分子合成について、紹介する。

【バイオマス利用技術の新展開】1日目・E会場
「再生可能資源としてバイオマスの果たす役割」(10:00~10:45)
             関西大学 長谷川 功
再生可能資源としてバイオマスに注目が集まりだしてから20数年になる。当初は、化石資源の枯渇への対策としての意味合いから、近年では地球温暖化防止のためのカーボンニュートラル性を狙った目的へと微妙に変化してきている。これまでの経緯を踏まえ、発表ではこれからのバイオマスの果たす役割を再確認したい。
 
【プラスチックリサイクルの最新動向2日目・F会場
「ポリオレフィンのケミカルリサイクル―NEDO-PJの進捗報告ー」
(13:00~13:30)
早稲田大学 松方正彦
NEDOプロジェクトでは、ポリオレフィンを主成分とする廃プラスチックの石油化学原料へのケミカルリサイクルのための触媒分解プロセスの開発が進められている。本講演では、触媒分解の前処理と触媒分解反応、製品の後処理工程をく含めたプロセスの提案を行う。
 
「進む欧米のケミカルリサイクルと日本の対応」(13:30~14:00)
(株)旭リサーチセンター 府川伊三郎 
2030年に向けたEUの容器包装プラスチックのリサイクル規制・目標をクリアすべく、従来のメカニカルリサイクルを補完するものとして、欧米でケミカルリサイクル(CR)のプラントの建設が急激に立ち上がっている。特に、クローズドループが可能な混合廃プラ(PE/PP/PS)の熱分解法CRとPET、PSなどの解重合法CRである。CRの技術(課題)とプラント規模、参入した石油化学企業と熱分解油メーカーとその連携を解説する。上記のリサイクル規制や目標が世界標準になることを想定して、日本の対応(CRプラント建設規模など)を考察した。
                                                                          
デジタル技術の応用sess.2日目・C会場
「気象データを活用した水素キャリア製造プロセス設計」
(13:00~13:30)                                                            
長岡工業高等専門学校 熱海良輔
再生可能エネルギを利用して水素キャリア製造を行うプロセスでは、気象条件の変動によって水素製造量が変化するという特徴がある。水素キャリア合成反応器に対する水素供給量の変動がプロセスに与える影響は、評価方法が未だ確立していない。本研究では、ダイナミックシミュレータと気象データを機械学習により連携させて、再エネ水素の製造量変動がプロセスに与える影響を評価する手法について検討したので報告する。

【若手研究者・技術者によるインターナショナルセッション】F会場
Selective conversion of polycyclic aromatic hydrocarbons in petroleum” 
 (1st Day, 13:30~14:00)            
Satoshi SUGANUMA (Hokkaido Univ.)  
重質油成分を化学品原料・燃料へ転換するための新しい戦略を提案する。はじめに重質油中のアルキル多環芳香族を脱アルキル化し長鎖アルカンと置換基のない多環芳香族へ転換する。これにより油中の成分がアルカン(脂肪族)と芳香族に分離可能となる。多環芳香族はそのままでは用途が限られるので、部分水素化と開環によりベンゼン誘導体へ転換することで化学品原料の収率を増やすことができる。本講演ではこれらの戦略を実験結果とともに示す。

Catalytic upcycling of plastic wastes into high value-added chemicals” 
(1st Day, 14:00~14:30)                     
Insoo RO (Seoul National Univ. of Sci. & Tech.)
Plastic is one of the most commonly used materials worldwide because of its versatile applicability, low cost, durability, and lightweight properties. According to the Organization for Economic Co-operation and Development (OECD) report released in 2022, only 9% of plastic waste is successfully recycled globally, and the majority of this waste is either incinerated (19%), landfilled (50%), or lost to the environment (22%). Globally, post-consumer plastics are predominantly recycled via mechanical recycling, in which the material is washed, cut, melted, and transformed into raw materials. However, mechanical recycling is typically accompanied by the degradation of plastic properties (downcycling). This talk will discuss an alternative way to recycle plastic waste into higher-value materials (upcycling) using catalysts.

Breakthroughs in solid sorbents for CO2 capture”  (1st Day, 14:45~15:15)  
          Jeong Gil SEO (Hanyang Univ.
Despite numerous efforts to decarbonize the energy sector, the rapid increase in CO2 global emissions continues. Thus, the role of carbon capture and utilization in attaining net zero emissions remains indispensable. This presentation aims to summarize emerging sorbents and technologies for CO2 capture. Among sorbents available for CO2 capture, eutectic mixture (EM)-promoted MgO-based sorbents are focused on due to their high sorption capacities. In-situ TEM studies show that EM-MgO undergoes rearrangement and EM migration after multiple uses, resulting in poor cyclability and reusability. Several strategies such as the use of stabilizers, supports, and employing a core-shell morphology were thus employed to achieve stable cyclic performances. Finally, electric field-assisted CO2 capture was found to increase sorption performance while decreasing temperature and energy requirements.

Development of a hollow fiber membrane reactor for selective water removal in chemical reactions (1st Day, 15:15~15:45)              
Seok Ki KIM (Ajou Univ.) 
The technology of selectively removing byproducts generated during chemical reactions has evolved in various forms, not only to increase yield through thermodynamic equilibrium shifting but also to extend catalyst lifespan and suppress undesired side reactions. However, most pervaporation membranes including zeolites, which lose their selectivity at higher reaction temperatures, had limitations for practical application. In this study, a polybenzoxazole polymer membrane was fabricated in a hollow fiber form and incorporated with a catalyst to develop a reactor for continuous water removal. This reactor was utilized in various reactions that generate water as a byproduct. The model reactions included reverse water-gas shift reaction, low-temperature methane oxidation reaction, and Fischer-Tropsch synthesis reaction, aiming to investigate how the effects of pervaporation membranes are manifested in each reaction.

Development of molecular catalyst for CO2 conversion and utilization” 
(2nd Day, 
9:45~10:15)                     
Ryoichi KANEGA (National Inst. Adv. Ind. Sci. & Tech.)
CO2の資源化、さらにはCO2の排出量削減に向けて、触媒開発が活発に行われている。一般的にCO2の変換において高温・高圧の条件が必要であり、エネルギー消費を抑えた温和な条件で機能する触媒が求められている。本講演では、これまで開発してきた新規触媒による化学反応や電気化学反応を利用したCO2変換や利用技術について紹介する。

Design of various reactions and solid catalysts for utilization of lignocellulosic biomass”  (2nd Day, 11:00~11:30)              
Atsushi TAKAGAKI (Yokohama National Univ.)
木質系バイオマスの再資源化はカーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な課題のひとつである。我々は不均一系触媒を用いた各種触媒反応を実施してきた。バイオマス変換では、対象とする基質や目的とする生成物により反応のタイプや触媒設計が異なる。液相での選択合成や、気相での反応機構解析、固相でのメカノケミカル反応など、これまで検討してきた各種反応について紹介する