[AS-02] 養豚生産農場における生産記録を活用した生産性向上のための疫学研究
日本の養豚生産は,海外と比較して生産性が低く,コスト高であることが弱点として挙げられる.近年,世界の人口は増加傾向にあり,国内での食肉の安定供給を確立するためには生産性の向上や国際競争力の強化が必要となる.しかし,生産現場では経済的な要因や立地的な要因など,種々雑多な因子が複雑に絡みあうため,科学的に証明されている因果関係が実証できないケースがある.そこで,本研究では,現場の生産記録や飼養管理,疾病発生情報といった複合的データを基にリスク因子を解明する疫学研究を実施し,養豚生産の生産性を向上させることを目的とした包括的なアプローチを目指した三つのプロジェクトを実施した.
1つ目のプロジェクトは「養豚生産農場における生産成績の定量化や適切な飼養管理の探査」であり,南九州に所在する養豚生産農場を対象として,F1交雑種やかごしま黒豚のバークシャー種における生産性の定量化および産次間や季節間における生産性の傾向を明らかにした.また,口蹄疫被災地域の養豚生産農場を対象とした調査では,経営再開後に地域として豚繁殖・呼吸障害症候群を陰性化したことにより,口蹄疫発生前よりも繁殖および肥育成績の改善がみられ,衛生状態を高く保つことによって経済的なメリットがあることを指摘した.
2つ目のプロジェクトは「生産性の低下を防止するための飼養管理の探査」であり,暑熱対策の適切な開始時期を明らかにするために,母豚の分娩率が低下し始める気温の分岐点を多変量ロジスティック回帰分析にて解析した.分娩率は初回種付け時で22˚Cを超えると低下し,再種付け時では顕著な低下はみられないことを指摘した.また,母豚の適切な更新計画の確立を目的とした調査を行い,交配後に廃用された母豚では廃用基準よりも実際の廃用時期が遅く,交配後の母豚に対する廃用の決定を迅速に行うことが重要であることを指摘した.
3つ目のプロジェクトは「母豚の廃用リスクを低減させるための疫学調査」であり,四肢障害を引き起こす原因である母豚の蹄損傷の調査を実施し,蹄損傷は蹄球と接合部で最も多く,蹄損傷がみられた母豚は横と副蹄の長さが他の母豚よりも長かったことを指摘した.また,不断給餌器を用いることにより,授乳期における総飼料摂取量やその後の生産成績が向上することを指摘した.
以上の一連の研究は,養豚生産の生産性向上を目指した最適な飼養管理システムを確立するための基礎および応用研究として貢献するものである.
1つ目のプロジェクトは「養豚生産農場における生産成績の定量化や適切な飼養管理の探査」であり,南九州に所在する養豚生産農場を対象として,F1交雑種やかごしま黒豚のバークシャー種における生産性の定量化および産次間や季節間における生産性の傾向を明らかにした.また,口蹄疫被災地域の養豚生産農場を対象とした調査では,経営再開後に地域として豚繁殖・呼吸障害症候群を陰性化したことにより,口蹄疫発生前よりも繁殖および肥育成績の改善がみられ,衛生状態を高く保つことによって経済的なメリットがあることを指摘した.
2つ目のプロジェクトは「生産性の低下を防止するための飼養管理の探査」であり,暑熱対策の適切な開始時期を明らかにするために,母豚の分娩率が低下し始める気温の分岐点を多変量ロジスティック回帰分析にて解析した.分娩率は初回種付け時で22˚Cを超えると低下し,再種付け時では顕著な低下はみられないことを指摘した.また,母豚の適切な更新計画の確立を目的とした調査を行い,交配後に廃用された母豚では廃用基準よりも実際の廃用時期が遅く,交配後の母豚に対する廃用の決定を迅速に行うことが重要であることを指摘した.
3つ目のプロジェクトは「母豚の廃用リスクを低減させるための疫学調査」であり,四肢障害を引き起こす原因である母豚の蹄損傷の調査を実施し,蹄損傷は蹄球と接合部で最も多く,蹄損傷がみられた母豚は横と副蹄の長さが他の母豚よりも長かったことを指摘した.また,不断給餌器を用いることにより,授乳期における総飼料摂取量やその後の生産成績が向上することを指摘した.
以上の一連の研究は,養豚生産の生産性向上を目指した最適な飼養管理システムを確立するための基礎および応用研究として貢献するものである.