09:30 〜 09:40
[IX29-04] トキ国内飼育下個体群の遺伝的多様性の近年における推移
【目的】トキ国内野生下個体群の存続可能性を高めるうえでは,当該群の遺伝的多様性の増加が必要であり,そのためには放鳥個体の供給源である飼育下個体群の遺伝的多様性を増加させる必要がある.本研究では,2007年導入の始祖個体(華陽と溢水)の飼育下個体群への遺伝的寄与および当該群の遺伝的多様性の近年における変化に焦点を当てて検証した.【方法】飼育下個体群での2010年およびここ数年における家系図を用いて血統分析を行い,計5羽の始祖個体(1999年導入:友友と洋洋,2000年導入:美美,上記2羽)の遺伝的寄与率および始祖個体のゲノムに関する有効数の推移などを評価した.【結果】2010年以降における友友,洋洋および美美の遺伝的寄与率はいずれも0.2以上であった.一方,華陽および溢水のそれらはそれぞれ,2010年には0.033および0.028,2014年には0.057および0.046,2017年には0.064および0.059であり,未だ低いものの着実に漸増していた.始祖個体のゲノムに関する有効数は,2010年には2.84,2014年には3.05であり,2017年にはさらに0.09の増加がみられた.今般,中国より導入された2羽(新始祖個体)については,それぞれ華陽や溢水のゲノム割合の高い個体と交配させ,遺伝子の飼育下個体群への速やかな取り込みと放鳥候補個体の作出を図っていくことが肝要と判断される.