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[IX29-15] イルカ用代用乳創製に向けた基礎的検討 ~イルカ乳と既存代用乳の成分比較~
【目的】現在イルカを人工哺育する際,動物用代用乳にサプリメント等を添加して与えているが,死亡例が多い.近年JAZAがイルカの追い込み漁を禁止し,加盟水族館におけるイルカの入手方法は自家繁殖のみとなり,人工哺育の重要性が高まった.本研究では,イルカ用代用乳創製を目指し,既存の動物用代用乳とイルカ乳の成分比較を行った.【方法】水族館で使用されている①水棲哺乳類用,②犬用,③全哺乳類用の3種の代用乳と,飼育頭数が最も多いハンドウイルカ乳の各成分・組成(全固形分含量,カリウム含量,乳糖含量,タンパク質含量,タンパク質組成,脂肪酸組成)を分析した.全固形分含量は直接乾燥法で,カリウム含量はイオンメーターを用いて,乳糖含量は酵素法で,タンパク質含量は色素結合法で測定した.タンパク質組成はSDS-PAGEで,脂肪酸組成はガスクロマトグラフによって分析した.【結果】全固形分含量は①と③がイルカ乳に近似し,乳糖含量とカリウム含量は③のみイルカ乳に近似しており,タンパク質含量はいずれもイルカ乳より低値であった.イルカ乳の主要カゼインはβ-カゼインであるが,代用乳はいずれもαs,κ-カゼインの割合が大きく,イルカ乳に含まれるC20以降の脂肪酸はいずれの代用乳にも含まれていなかった.よって,現状の3種の代用乳の成分はいずれもイルカ乳と大きく異なり,イルカ用代用乳創製が必要であると考えられた.