11:45 AM - 12:15 PM
[LS2-01] 牛乳の品質と製造方法に関する最新の知見 ~明治おいしい牛乳のおいしさの秘密~
食品にとって酸化はおいしさを損なう要因となります.牛乳においても同様であり,生乳に酸素がある状態で殺菌すると,乳成分の酸化により硫黄化合物などの香り成分が生じます.それにより,加熱臭や劣化臭など好ましくない風味が生成されます.約10年におよぶ研究により,最も酸化の起きやすい殺菌工程において,生乳中の酸素を大幅に低減し,殺菌時の乳成分の酸化を抑制える「ナチュラルテイスト製法」を1998年に開発しました.この製法により,牛乳本来の自然でさわやかな香り,ほのかな甘みとスッキリとした後味などの特徴をもった牛乳となり,牛乳の風味が向上することが明らかになりました.「明治おいしい牛乳」は,東北地方でのテスト販売の成功を受け,2002年に全国にて販売を開始し,我々は差別化が困難な牛乳の世界で,差別性のある商品を生み出すことに成功し,牛乳市場に「おいしさの革命」をもたらしました.
発売後においても,さらなる牛乳のおいしさへの挑戦や検討を続け,昨年2018年春に「明治おいしい牛乳」は,「製法」と「容器」がさらに進化いたしました.今回の進化では,未殺菌段階の生乳中で自発的に進む酸化が牛乳の風味に与える影響に着目し,その酸化を抑制することで,さらに牛乳の風味が向上することを突き止め,工場に到着した生乳から速やかに酸素を低減させる「新たなナチュラルテイスト製法」を開発・適用することで「明治おいしい牛乳」の風味を大きく向上させました.また,パック詰めした牛乳は,蛍光灯などの光による酸化や開封後の外気との接触による臭いの吸収などにより,風味が徐々に低下します.「牛乳のおいしさ」をもっと長持ちさせるという視点から,開封時まで空気と触れず,遮光性を大幅に高めたリキャップ可能な牛乳に最適な新容器を採用しました.
本セミナーでは,「明治おいしい牛乳」における,「組成や衛生的品質だけでなく,風味も含めた乳質にこだわった生乳」,「新たなナチュラルテイスト製法」,「確かなおいしさをお客様へお届けする取り組み」の3つのこだわりを中心に,「新しくなった容器」の特徴を含め科学的なデータと併せて紹介します.さらに,わたくし自身のこれまでの道のりと,企業で働く女性として働き方と合わせ,「明治おいしい牛乳」の世界を熱く語りたいと思います.