[P29-25] ウシ精液輸送時の不活性ガス封入効果の検討
【目的】本研究は,ウシ精子運動性が維持する精液輸送法を見出すことを目的とした.【方法】8頭のホルスタイン種種雄牛から採取した原精液をトリス‐クエン酸糖液で2倍希釈した.<実験1>希釈精液の入った試験管内に精製空気(Air),酸素(O2),水素(H2),窒素(N2)またはアルゴン(Ar)を封入し,18℃で24時間振とうしながら保存した.<実験2>試験管内に無処理またはN2を封入し,試験管を保温しながら宅配便により輸送した.保存または輸送した精液は常法に従って凍結し,精子運動性を経時的に測定した.<実験3>試験管内にAir,O2またはN2を封入し,18℃で24時間振とうした精子の活性酸素種産生を蛍光顕微鏡およびフローサイトメーターにより検出した.【結果および考察】<実験1>H2,N2およびAr群は運動精子率が保存後にAir群より有意に高く,O2群は有意に低かった.<実験2>実験1で精子運動性を保持する効果のあったN2を用いたところ,N2群は運動精子率が無処置群より有意に高かった.<実験3>活性酸素種産生はいずれの群も顕著な差が観察されなかった.以上より,不活性ガスの封入は液状精液の輸送でウシ精子運動性を保つために有効であることが示された.また,これらの効果は活性酸素種の産生抑制とは異なる機構で得られた可能性が示された.本研究は,日本中央競馬会畜産振興事業の助成を受けて行った.