[P29-36] Cumate誘導型の遺伝子発現調節システムによるマウスiPS細胞の樹立
【目的】ウシを含む多くの動物種におけるiPS細胞は未だに樹立されていない.またTetシステム以外にiPS細胞を樹立できる遺伝子発現調節システムは報告されていない.そこで,体細胞からiPS細胞への初期化メカニズムを解明するために,新たなシステムを確立する必要がある.本研究では,CumateシステムがマウスiPS細胞の樹立に応用できるか検証した.【方法および結果】山中4因子とGFPを共発現するCumate誘導型ベクターを構築した.これをマウス胎仔線維芽細胞に遺伝子導入し, Cumate添加によるiPS細胞の誘導培養を行い,ES細胞に酷似したコンパクトコロニーを得た.Cumate非添加で継代培養したところ,GFP由来の緑色蛍光が消失した.Western Blottingと免疫蛍光染色によりiPS細胞マーカーの発現を検証したところ,NANOG・SSEA-1が検出された.また,内在性のNanogとOct4プロモーターDNAは,ES細胞と同様,極度な低メチル化状態であった.胚様体形成法により分化誘導したところ,心筋組織に特徴的な拍動する細胞集団が形成された.以上の結果より,CumateシステムによりマウスiPS細胞が樹立できることが示された.今後は,CumateシステムとTetシステムを組合わせ,iPS細胞への初期化における遺伝子機能について詳細に解析する予定である.