日本畜産学会第125回大会

講演情報

口頭発表

[VI-29-13_14] 遺伝・育種(VI-午前)

2019年3月29日(金) 11:00 〜 11:20 第VI会場 (8号館8402講義室)

座長:馬場 俊見(日ホ北支局)

11:10 〜 11:20

[VI29-14] 抵抗性・感受性牛を活用した牛白血病ウイルス清浄化対策の有効性

陸 拾七1, 白 らんらん1, 広瀬 智哉1, 佐藤 洋隆1, 綿貫 園子1, 朝治 桜子2, 安藤 麻子2, 猪子 英俊2, 米山 洲二3, 川島 敬二4, 小渕 裕子5, 砂長 伸司6, 猪熊 道仁7, 藤田 圭佑7, 田中 なほ子8, 篠崎 康雄8, 山中 梨沙9, 安井 杏菜9, 安田 奏平9, 馬場 未帆9, 御村 宗人10, 石崎 宏11, 竹嶋 伸之輔1,12, 間 陽子1 (1.理研開拓研究本部伊藤ナノ医工学, 2.ジェノダイブファーマ(株), 3.栃木県央家保, 4.群馬県部家保, 5.群馬西部家保, 6.群馬県畜産課, 7.千葉中央家保, 8.千葉県部家保, 9.埼玉熊谷家保, 10.埼玉中央家保, 11.農研機構, 12.十文字学園女子大)

【背景・目的】牛白血病ウイルス(BLV)は全世界に蔓延し甚大な被害を与えている.我々は体内BLV遺伝子(PVL)量を制御するウシBoLA-DRB3アレルを同定した.本研究では,関東の5農場を対象に抵抗性(R)と感受性(S)アレルを有する牛を識別し,それらを活用したBLV清浄化対策を2年間にわたって実施した.
【材料・方法】5農場の約350頭の乳牛を初夏に全頭採血し,DNAを抽出後にアレルを同定し,PVLを定量した.Rアレル(DRB3*0902又は*14011)を有し,PVL量が104コピー/105細胞以下の牛を抵抗性(R)牛とし,感染牛と非感染牛の中間に配置し,陽転を防ぐ生物学的防壁として活用した.同時にSアレル(DRB3*1201又は*1501)を有し,PVL量が104コピー/105細胞以上の牛を感受性(S)牛とし,積極的に更新する対策を実施した.その効果の検証は初冬に実施した.
【結果・考察】2農場は陽転ゼロに成功した(1農場は2年連続で).S牛を積極的に更新し,4農場の陰性率が上昇し,5農場のPVL量が低下した.特に1農場で陰性率が83%まで激増し清浄化の見通しが立った.空胎期間の延長で計算した経済被害は著しく減少した.

R牛を生物学的壁として活用し,S牛を積極的に更新することは有効なBLV清浄化対策である.従ってR牛を積極的に残すことは有効なBLV清浄化育種戦略として考えられる.