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[VIII29-08] Sema3A依存的な遅筋型筋線維形成機構の食品機能学的制御: リンゴポリフェノールによる促進と活性成分の同定
【背景】我々は,筋幹細胞(衛星細胞)が合成・分泌する多機能性細胞制御因子semaphorin 3A (Sema3A) が細胞膜受容体neuropilin2-plexinA3に結合すると遅筋型筋線維の形成を誘導することを明らかにした (Tatsumi et al. 2017).また,これまでのラット給餌実験の結果から (Mizunoya et al. 2015),Apple Polyphenols (AP;リンゴ幼果皮由来のポリフェノール混合物)にSema3A受容体のアゴニスト活性を有する成分が存在すると予想された.そこで,本研究では,この活性成分を衛星細胞の初代培養系を用いて同定することを試みた.【方法】若齢ラット由来衛星細胞の初代培養系を用いて,衛星細胞が融合し始める分化初期に各種ポリフェノール精製標品を培養液に添加し,標的遺伝子のmRNAの発現変化を調べた.【結果】Sema3A依存的シグナル伝達を担うmyogenin,MEF2D,遅筋型筋線維の指標であるMyHC1のmRNA発現量がAPの添加,及びAP中の成分であるクロロゲン酸の添加(終濃度10-1000 ng/ml)によって増加した.また速筋型MyHC (2a, 2x, 2b)やSema3Aの発現に顕著な変化は認められなかった.以上より,クロロゲン酸がSema3A細胞膜受容体のアゴニスト活性を有し,食品機能学的に遅筋型筋線維の形成を促進できることが示唆された.