日本畜産学会第125回大会

講演情報

口頭発表

[XIV-29-16_18] 畜産物利用(XIV-午後)

2019年3月29日(金) 13:00 〜 13:30 第XIV会場 (8号館百周年記念ホール)

座長:宮口 右二(茨城大農)

13:20 〜 13:30

[XIV29-18] L-ヒスチジンは低塩濃度条件下の天然アクトミオシンの加熱ゲル形成を抑制する

窪野 佑, 若松 純一, 玖村 朗人, 早川 徹 (北大院農)

【目的】我々は低塩濃度条件下のミオシンがL-ヒスチジン(His)添加によって溶解し,これを加熱すると40~50℃で透明なゲルが形成されることを報告している.しかし,食肉加工に応用するためには天然アクトミオシン(AM)に対するHisの作用を明らかにする必要がある.本研究ではHisが低塩濃度溶液中のAMの加熱特性に与える影響を検討した.【方法】鶏浅胸筋から調製したAM(0.1~10 mg/ml)をHis溶液(1 mM KCl, 5 mM His)に対して透析後,30~70℃で加熱し濁度を測定した.AMの動的粘弾性(貯蔵弾性率:G',損失弾性率:G”)は加熱しながら測定した.また,透過型電顕により各温度におけるAMの分子構造を観察した.【結果】His溶液中のAMは加熱によってゲルを形成せず,濁度の大きな上昇はみられなかった.また,His溶液中のAMのG'およびG”の挙動はHisを含まない条件とは異なり,G'は約50℃で低下したのち上昇したが,G”では上昇はみられなかった.さらに,Hisを含まない条件下のAMは50℃以上の加熱で粒状の凝集体を形成したが,His溶液中のAMは50℃での加熱後もフィラメント状の構造を維持していた.以上より,HisはAM分子の加熱に伴う凝集反応および50℃付近での分子構造の変化を抑制することで,低塩濃度溶液中でのAMのゲル形成を抑制することが示唆された.