日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

2. 遺伝・育種

育種・遺伝1

2021年9月15日(水) 08:30 〜 12:00 育種・遺伝 (オンライン)

座長:山崎 武志(農研機構北農研)、馬場 俊見(日ホ北支局)、萩谷 功一(帯畜大)、井上 慶一(家畜改良セ)、西尾 元秀(農研機構畜産部門)、荒川 愛作(農研機構 畜産研究部門)

[II-15-07] 乳用牛における泌乳量の成熟度の遺伝的トレンド

*増田 豊1、山口 諭2 (1. 酪農大農食環境、2. 北酪検)

乳用牛の乳生産形質について、遺伝能力の加齢に伴う変化(遺伝的成熟曲線)に関する遺伝的トレンドを推定した。データは、1990年から2020年までに北海道で分娩し、分娩月齢が18から120か月齢の範囲にある雌牛の305日乳タンパク質量であった。相加的遺伝効果と恒久的環境効果に、分娩月齢を独立変数とする変量回帰(2次のLegendre多項式)を当てはめた。検定娘牛を100頭以上もつ国産種雄牛について、アニマルモデルBLUP法で遺伝変量回帰係数を算出した。初産から5産までの分娩月齢を24、38、51、64、77か月齢とし、各時点の遺伝回帰曲線の高さを各産次における推定育種価とした。遺伝的成熟度を2産と初産の推定育種価の差、生涯育種価を初産から5産までの推定育種価の合計とした。2008年以前に誕生した種雄牛では、遺伝回帰曲線は初産をピークに右肩下がりの傾向であったが、新しい種雄牛では、ピークは初産以降にシフトした。遺伝的成熟度は2008年以前では負となる傾向があり、それ以降に誕生した種雄牛で常に正であった。生涯育種価の遺伝的トレンドは正であったが、2009年以降にその改良速度は向上した。2009年以降の成熟度と生涯育種価の改善は、種雄牛の選抜に2産次以降の育種価が反映された結果であると推察される。成熟度と長命性の遺伝的関係について、近年のデータを用いて解析する必要がある。