[IV-15-15] ウシ乳房炎由来黄色ブドウ球菌分離株の特性解析
【目的】黄色ブドウ球菌による乳房炎発症牛は完治することが困難であることが報告されている。要因として本菌の乳房炎由来株とその他由来株の性状に関する情報が十分でないことから効果的な治療が行えないことが考えられる。本研究では、宮城県内の乳房炎罹患牛から分離した黄色ブドウ球菌についてスキムミルク凝集活性及びその他の生化学性状を調べ、乳房炎由来株の特性を明らかにすることとした。 【方法】宮城県内の乳房炎発症牛から分離した黄色ブドウ球菌60株及びヒト由来標準株2株を供試した。培地はTSB培地を用いた。スキムミルク凝集活性を調べるため培養菌液から菌体を分離してスキムミルクに再浮遊後、一晩培養して凝乳の有無を観察した。培養上清の凝集力価は4 %スキムミルクアガーにサンプルを接種し、凝集の有無から求めた。培養上清中の凝集活性画分の分子量を測定した。培養菌液を0.3%軟寒天L培地に接種し、一晩培養させ、コロニー拡散能の有無を判定した。【結果】供試した乳房炎由来株は全てスキムミルク凝集を示したが、ヒト由来の標準株2株は凝集を示さなかった。乳房炎由来株のスキムミルク凝集力価は2~512倍で菌株によって差が認められ、凝集活性を示すが凝集力価は1以下を示す菌株も6菌株確認された。凝集活性画分の分子量は約34kDaであることがわかった。コロニー拡散能は乳房炎分離株60菌株の内、7菌株がコロニー拡散能を示さなかった。