日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

4. 形態・生理

形態・生理1

2021年9月15日(水) 08:40 〜 12:00 形態・生理 (オンライン)

座長:小笠原 英毅(北里大獣医)、室谷 進(農研機構畜産部門)、松崎 正敏(弘前大農学生命)、小林 謙(北大院農)、磯部 直樹(広大院生物圏)、鈴木 裕(北大院農)

[IV-15-16] 牛乳房炎罹患牛由来黄色ブドウ球菌に対するマダニ由来抗菌ペプチドの抗菌活性評価

*下田 蒼1、宮澤 亮太1、櫻庭 大騎2、松田 敬一3、安藤 太助1、米山 裕1 (1. 東北大院農、2. 東北大農、3. NOSAI宮城)

【背景】 牛乳房炎は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus, SA)や大腸菌などの病原細菌が乳房内へ感染することで発症し、乳質および泌乳量の低下を招く経済的損失が甚大な家畜疾病である。乳房炎の治療は一般的に抗生物質投与が行われているが、一方で乳房炎罹患牛の生乳や食肉からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が世界中で検出され、畜産物を介してヒトへ伝播することが懸念されている。そのため獣医畜産領域において薬剤耐性菌出現リスクを軽減させる新規抗菌薬が強く求められている。
【材料および手法】 我々はSAやMRSAに対して強力な抗菌活性を示すマダニ由来抗菌ペプチド(Persulcatusin, IP)を乳房炎防除の新規ツールとして着目した。宮城県央域の畜産現場において乳房炎罹患牛から分離されたSAを被験菌として、最小発育阻止濃度(MIC)を測定することでIPの抗菌活性を評価し乳房炎由来SAに対する有効性を検討した。
【結果】SA分離株に対するIPのMICは0.25~8 μg/ml(0.06~1.9 μM)であり、βラクタム系抗生物質のアンピシリンおよびマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンのMICはそれぞれ0.5~1 μg/ml(1.4~2.9 μM)、0.5 μg/ml(0.68 μM)であった。以上よりIPは乳房炎由来SAに対してin vitroで有効であることが示された。