16:40 〜 17:00
[MS-05] 【講演3】
豚熱の現状および今後の防疫対策
2018年9月に26年ぶりに発生した豚熱(CSF)はイノシシ間での伝播により現在もその発生域を拡大し続けている。感染防止の方策として、飼養豚には国産生ワクチン(GP生ワクチン)、野生イノシシには海外製のベイト(餌)ワクチンの緊急接種および散布が行われ、飼養豚では概ね期待通りの効果が得られているものの、イノシシ群での清浄化は地域レベルでも確認されていない。本疾病は世界各地に浸潤しており、ヨーロッパ諸国においても2000年代に広範囲な流行を経験した。彼国では狩猟・捕獲、餌ワクチン散布等によりイノシシからの感染の駆逐に成功しており、我が国の現状とは大きく異なる。この様な違いが生じる最大の要因は地形だと考えられている。欧州ではなだらかな地形が続くのに対し、我が国では南アルプスを代表とする高い山地が本州を南北に貫いており、イノシシの狩猟や餌ワクチンの散布の障壁となっている。この為、十分な資材と人員が揃ったとしても短期間で清浄化を成し遂げることは困難であり、イノシシ間およびイノシシから飼養豚へのCSFの感染は今後も長期間に渡り継続されると考えられる。
一方、海を隔てた東アジアおよび東南アジア諸国ではアフリカ豚熱(ASF)の発生が継続しており、新たな悪性感染症が目前に迫っている。東欧では野生イノシシにおけるASFが5年以上持続していることから、国内のイノシシに感染した場合にはCSFと同様にイノシシ間での感染が持続すると想定される。さらにASFに対してはワクチンなどの有効な予防法は確立されていない。ASFの侵入を見据えると、CSF対策に於いてもワクチンに頼らない純粋なバイオセキュリティの強化による飼養衛生管理を実践していくことが必要と考えられる。施設等のハード面および衛生管理のルール、従事者の意識等のソフト面は互いに補完することが可能であることから、可能な範囲で改善を行い、農場バイオセキュリティを最大限に高めていくことが重要である。
【略歴】
2007年 3月 北海道大学大学院獣医学研究科 博士課程修了
2007年 4月 (国研)農研機構 動物衛生研究部門 入所
ウイルス・疫学研究領域 牛豚ウイルスユニット
2017年 4月 同 越境性家畜感染症研究領域 海外病グループ
一方、海を隔てた東アジアおよび東南アジア諸国ではアフリカ豚熱(ASF)の発生が継続しており、新たな悪性感染症が目前に迫っている。東欧では野生イノシシにおけるASFが5年以上持続していることから、国内のイノシシに感染した場合にはCSFと同様にイノシシ間での感染が持続すると想定される。さらにASFに対してはワクチンなどの有効な予防法は確立されていない。ASFの侵入を見据えると、CSF対策に於いてもワクチンに頼らない純粋なバイオセキュリティの強化による飼養衛生管理を実践していくことが必要と考えられる。施設等のハード面および衛生管理のルール、従事者の意識等のソフト面は互いに補完することが可能であることから、可能な範囲で改善を行い、農場バイオセキュリティを最大限に高めていくことが重要である。
【略歴】
2007年 3月 北海道大学大学院獣医学研究科 博士課程修了
2007年 4月 (国研)農研機構 動物衛生研究部門 入所
ウイルス・疫学研究領域 牛豚ウイルスユニット
2017年 4月 同 越境性家畜感染症研究領域 海外病グループ